012 : 負けないで1


次の朝、ブランドンが浮かない顔で私達の部屋を訪れた。



「昨夜一晩考えたのですが…」

ブランドンが今から語ろうとしている事は、なんとなく予想が付いた。



「やはり、僕には無理なような気がするのです。
せっかく何年もかけて探し当てた屋敷ではありますが…
これからのことをどう考えても、あそこに二人で住むのは無理な気がするんです。」

「何言ってるんだ!
あんた、ついにみつけたんだぜ!
友達の夢を果たすって誓って、今まで苦労してきたんだろ?
それをそんなに簡単に諦めて良いのか?」

「……ですが、この倍の金額なんて、分割ばらいにしてもらっても僕に払えるかどうか…
まさかそんな何十年も待ってもらえるとは思えませんし、その間にも生活費もかかります。
実はこの二年間の放浪の間に僕の持っていた金はなくなり、フランクリンの資金からも使ってる状態なんです。
この金には手を付けたくはなかったのですが…」

「それは仕方がないですよ。
ステファンを連れて、町から町へ渡り歩いてるんです。
金がかかるのは当然ですし、その間、あなたが働けないのも仕方のない事です。
フランクリンさんもそのことはきっとわかってらっしゃると思いますよ。
あなたがステファンを引き取ってくれなかったら、彼は孤児になって…あ……」

「……マルタン、どうかしたのか?」

私は、ブランドンと話していて不意にあることを思い付いたのだ。



「ブランドンさん…あの屋敷を孤児院にするのはいかがでしょうか?」

「あそこを孤児院に?!」

「そうです。
あの広さなら、たくさんの孤児を収容することが出来る。
その子達の世話をしながら、国からの援助や寄付…そうだ、教会にも援助を頼んでみたらいかがでしょうか?」

「マルタン!そいつは名案だ!
あんなに広い所だったら、たくさんの子を収容出来る!
子供達じゃなくて、老人や困った人も受け入れる施設にしたら良いんじゃないか?」

「……そうですね…
もしもそう出来たら…僕もこれ以上幸せなことはありません。
でも…まずは資金の問題です。」

そこへ扉が叩く音がして、クロードとクロワが入って来た。



「ブランドンさん、いらっしゃったんですか!
実は、つい先程、ルーカスさんが来られたのですが…今、ルーカスさんのお宅でジョーンズさんがお待ちだそうです。」

「ジョーンズさんが…?
どうしましょう?」

「ブランドンさん、ここは僕に任せて下さい。」

クロードが、親指で自分の胸を指差した。


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