「ここの掃除はあんたがしてるのか?」

「そうなんだ。
掃除は月に一度で良いって言われてるんだけどな。
ここはうちとは比べ物にならないほど広いだろ?
ここにいるとまるでここが自分の家みたいな気分になれるから、ついつい来てしまうんだ。
広いから、掃除が終わると汗びっしょりでな…良い運動になるよ。」

ルーカスがしょっちゅう来ているおかげで、この屋敷はこんなにも生き生きとしているのだとわかった。
人が住まなくなった家というものは、どこか薄気味が悪い。
中には、それはこの世の者ではない者が住みつくからだとか言う者もいる。
だが、ここはルーカスのお陰なのか、そういう気配がまるでない。
しかし、それではなぜこんな良い屋敷を今まで買おうとした者がいなかったのだろう?
私等には手が届かないのは仕方がないことだが、世の中には金を持った者はたくさんいるというのに…



ルーカスは屋敷の中を次々と案内してくれた。
どの部屋も一様に広い。
この屋敷の大きな印象は、玄関に入った時と変わらず、その開放感と明るさだ。
なんでも、異国の占いだかまじないだかによって間取りを決められているのだそうで、風や光がどこにも滞らない設計になっているのとのこと。
それが屋敷の中をとても居心地の良い空間にしている。

私達は部屋を移る度に、感嘆の溜息を漏らした。



「じゃあ、次はこっちだ。」

ルーカスが、扉を開けると、そこには地下に続く階段が続いていた。



「ここに地下洞窟があるのか?」

「そうなんだ。
地下の水路と繋がってて、洞窟は昔はワインや食物庫として使ってたらしいよ。」

ランプの灯かりを頼りに、私達は長い石造りの階段を一歩一歩降りて行った。
空気が冷たく湿気を含んだものに変わったのが感じられる。



「これか!!」

リュックの声が、地下に響く。
私達の目の前には大きな洞窟が口を開けていた。


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