give up

「私、諦めるわ」

 私がそう何の前触れもなく言えば、なまえはきょとんとした瞳を私に向けてきた。なかなかしない彼女の表情に、私は胸の辺りがきゅんとするの感じた。

 ……ああ、駄目じゃない。諦める、って今わざわざ声に出してまで言ったのに。

「なにを諦めるの?」

 探るような瞳から逃れるように、目を逸らす。
 嗚呼。でも、さすがの鋭い彼女でも分からないでしょうね。私が、貴女を、

(好き、だなんて)

 だって私も女の子。なまえも女の子。有り得ないもの。

 しかも私は、ゴールドや他人から見れば「真面目」らしい。そんな真面目な私が女の子に恋してるなんて、本当におかしな話よね。
 私だってこんな感情、持つとは思わなかったんだから。憧れから始まって、こんなに想いが膨らむとは。貴女ってどうしてそんなに魅力的なの?

 ほら、今だって心配そうに覗き込んでくる。優しい、優しくてズルい人。

「諦める、かわりに……」

 最後、だから。

 私は彼女の頬に手を伸ばし、優しく包みこんだ。
 驚いたように口を開ける彼女に、チャンスとばかりに私は自分の唇を近付け、貪るようにその唇を食べた。



  ついに書いてしまった百合夢。初めての百合夢の割に若干どろどろしているけれど。



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