俺が彼女について知っていること。
 二年一組、出席番号は二十二番。席は教室のちょうど真ん中の列の、うしろから三番目。
 帰宅部。レンタルビデオ屋でバイトをしている。成績は優秀で、定期テストの結果は毎回学年で十番以内に入るほど。得意科目は数学と生物。苦手科目は体育。
 好きなものは花。現在裏庭の花壇を占領して、ひまわりを育てている。あとは、パンダも好き。スマホカバー、通学カバンについているぬいぐるみキーホルダー、タオルハンカチなどなど、彼女の周りはそこはかとなくパンダグッズで溢れている。嫌いなものは牛乳と雷。
 昼休みは食堂へ向かう姿を二、三度見たことがあるけれど、基本的には教室にいる。今は、中庭で週に一度(なんとなく木曜日ってことになっている)、俺といっしょに昼飯を食べる。ちなみに昼飯の内訳は、菓子パンいっこにペットボトルのお茶が定番。少食。菓子パンをほおばる姿が、小動物みたいでかわいい。
 かわいいといえば、花壇を占領していると宣言したときや、こないだの初デートで紫陽花についていろいろおしえてくれたときなど、時折見せるドヤ顔は最高にかわいい。萌える。萌えるといえば、こないだのデート中の雨で濡れたブラウスが透け、

「おい、崎?」

 机に影ができていた。
 目を上げれば、俺の席の前には財布を手にした拓実が立っていた。

「昼飯、購買行くんじゃなかったのか?」
「……」

 ぼやっとした頭で、昼飯、と思う。
 そうだった。今日も母ちゃんが弁当作ってくれなかったから、購買行かないと飯がないんだった。財布をスラックスのポケットに突っ込んで、立ち上がる。
 拓実と並んで廊下を歩いている途中、つい鼻笑いが漏れた。ものすごーく自嘲的なやつが。すかさず拓実が怪訝そうな顔を向けてくる。

「なんだよ」
「俺ってキモいな……」
「…………保健室行くか?」
「……や、いい……」

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