月曜日の学校はツライ。
「杏、おはよ」
ぼやっとした頭のまま自分の席につくと、後ろの席から七瀬につつかれた。
「七瀬、おはよ……」
「なにあんた眠そ〜。二日酔い?」
「ちがうし……」
七瀬とは一年のときも、そして今年も同じクラスだ。
七瀬と仲良くなった最初のきっかけは出席番号が近かったからという些細なものだけど、今では一番よく話す友だちだった。
「杏ぅ、どうだった? 昨日の合コンは」
そしてさっそく突っ込まれた。七瀬には昨日合コンに行くことを話していたのだ。
わたしは言葉に迷う。うーん、昨夜のことをどう話そうか。
と、そのとき、わたしと七瀬の上に影が落ちた。
「合コン!? 杏ちゃん、合コン行ったの!?」
その大袈裟な声に、わたしより七瀬が顔をしかめた。
「うっせーよ、森林」
「……森くん、おはよ」
「おはよーさん」
顔を上げると、森くんの森のようなくしゃくしゃの髪でわたしの視界はいっぱいになる。
森くんとは、今年はじめて同じクラスになった。しかしまあ、ちょっとした事情で、わたしがよく話す唯一の男子なのだった。というか、同じクラスになったらやたら向こうから話しかけてくる。
「へぇー、杏ちゃん合コンなんて行くんだ〜。そっかぁ、杏ちゃん成長したな〜。よーしよしよし」
森くんが体格に比例したでっかい手で、わたしの髪をわしゃわしゃとかき回してくる。やめてほしい。毎朝時間をかけてブローして、くせっ毛の髪をなんとかそれなりにしているんだからやめてほしい。でも、振りほどく気力もない。わりと毎度のことだし。
「合コンっていうか……バイト先の先輩にタダで飲み食いしていいって言われたから……」
「あーた未成年でしょーが。俺もだけど」
「ジンジャーエールしか飲んでないもん」
「で、どうだったの? ちゃんとカレシ作ってきたか?」
「……」
カレシ……できた、のか? わからん。
寝て起きて、こうして学校に来てみたら、昨夜のことは夢だったように思えた。そしてそれを確かめようがない。だって、連絡先すら交換しなかったし。
そんなふうにうやむやとわたしが無言でいるうちに、チャイムが鳴った。すぐに教室に担任教師が入ってくる。
結局、無言の否定ってことで二人は受けとったらしく、七瀬も森くんもそのままあっさり自分の席へ戻っていった。わたしは髪を手ぐしで梳きながら息をつく。だけど、消化不良のような気持ちが胸のうちにあるのだった。わからない問いをそのままにしているような感じ。
でも、誰に聞けば答えが返ってくるのかわからないし。
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