わたしはただ飲み食いしながらぼけっと座っていただけだったけど、合コンとしては盛り上がっていたらしい。

「このあと、二次会どうする? カラオケなんだけど……」

 店を出て、エミさんに聞かれたわたしは、失礼にならない程度に笑みを添えつつ、今日は帰ります、と答えた。

「明日学校あるし」
「そっか、そうだよね。高校は早いもんね。あー、やばい! 高校とかすでに懐かしいな〜!」

 エミさんはそれなりに出来上がっているらしく、いつもより一回りぐらい輪をかけてハイテンションだ。

「エミさんは明日平気なんですか? 大学」
「うん、うちら明日昼からだからさ。杏ちゃん、今日はほんとにありがとね。てか帰り一人で平気?」
「だいじょぶです。まだ九時だし。こちらこそごちそうさまでした」
「気をつけてね!」
「あれ、徳丸さん帰るのー?」
「徳丸さーん! バイバーイ!」

 酔っ払いたちに盛大に見送られる。
 エミさんたちと別れ、わたしは一人駅へ向かった。

 合コンは微妙だったけど、まあ特別な期待はしてなかったし、何よりほんとうにタダで飲み食いできたし、悪くはなかったかも。
 わたしにしてはポジティブな思考だった。賑やかな空気にあてられたのかもしれない。
 あと、そうだ、崎くんと話したのが意外と楽しかった気がする。
「徳丸さん、好きな食べ物は? 俺はね、焼きそばパン!」とか「暇なとき何してる? 俺はね、最近三点倒立にハマっててさ〜」とか「好きなタレントとかいる? 俺はね、大泉洋! あの人最高におもしろいよね! 俺大好き!」とか、関連性のよくわからない、まあ他愛のないことだったけど……。そんで質問攻めしてくるわりに、わたしほとんど聞いてるだけだったけど……。

「徳丸さーん!」

 なんて思いに耽っていたら、後ろから走る足音が近づいてきた。わたしには関係ないと思ってそれを完全に無視していたら、夜の繁華街の喧騒に負けない声がわたしを呼んだ。
 虚をつかれた思いでその場に立ち止まり、ふり返る。崎くんが、片手をふりながら駆け寄ってくるのが見えた。距離はあっというまに縮まる。わたしの前に立った崎くんは、走ってきたにもかかわらず、ちっとも呼吸は乱れていない。

「送るよ」

 言うだけ言って、こちらの返事も聞かないで、崎くんはわたしの横に並んだ。
 なんだかよくわからないけど、歩道をいっしょに歩くことになった。

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