俺の膝の上で妙に弱々しくなってしまって心配したものの、30分も休めば海未はほとんど回復した。
 時間はすでに昼を回っていた。
 海未がアイスクリームが食べたいと言うので、近くの屋台でカップとコーンのアイスクリームを一つずつ買って、飯代わりに食べた。コーンまで綺麗に完食して、「ごちそうさま」と満足そうに言うのを見て、内心でほっと息を吐く。
 ふと、海未が何かを察知したような機敏な動きで顔を上げた。

「けーた!見て見て!あそこにミミーちゃんがいるよ!」

 海未が指差した先、少し離れた噴水のところに目を向ければ、子どもたちに囲まれ戯れているピンクの猫の着ぐるみを見つけた。
 ミミーちゃん。海未がまさにその頭につけている、猫耳カチューシャのモチーフのキャラクターだ。
 日頃海未がグッズを集めたりして愛でているから、 キャラクター自体に特に興味も関心もなくても、名前ぐらいは自然と覚えていた。

「ミミーちゃんお写真を!お写真をお願いします!」

 すっかり興奮した様子で、海未が噴水のほうへ走っていく。おいさっきまでのしおらしい姿どこいったよ。
 回復したらしたでこれだ。俺は、呆れとも何とも言い難い気持ちで、海未の後を歩いて追う。

「けーたっ、ミミーちゃんといっしょにお写真撮ってもらおうよ」

 ちゃっかりミミーちゃんと手をつないでいる海未が、にこにこしながら俺に言う。
 つーかミミーちゃん近くで見たら意外とデカイ。高さ俺ぐらいあるし、可愛いかこれ?

「いいよ俺は」
「なんで?撮ろうよ、せっかくミミーちゃんいるのに」
「写真苦手なんだよ。俺が撮るから」
「けーたは苦手なものばっかりだね」
「うっさい」

 スマホのカメラを構える。

「撮るよ」

 ミミーちゃんに抱きついて、やっぱりにこにこしながら俺を見ている海未。
 そんな姿を画面越しに眺めて、無邪気だな、と思いながら、シャッターを切った。



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