「むふふ。けーた、不機嫌な顔しちゃだめだよ。似合ってるし、とてもかわい……ギニャッ」

 渾身のデコピンを食らわす。
 グッズショップを出てパーク内を歩きながら、頭の猫耳に関しては触れないことにする。もうないものとする。
 とにかく、このテーマパーク自体は有名にしろ、二人してはじめての場所なので、ガイドブックを確認しつつ、とりあえず近いところから順にアトラクションを制覇していくことになった。

「なんか絶叫系ばっかだな。大丈夫かよおまえ」
「大丈夫だよ、余裕だよ」
「ほんとかよ。ゲロ吐くなよ、エチケット袋持ってきてねえんだから」
「吐かないもん。けーたこそゲロ吐かないでね」

 とかなんとか、けろっとした顔で答えていた数時間前の海未。
 パークの目玉でもある超大型ジェットコースター、室内型ジェットコースター、垂直落下のアトラクションなどなど。一通りの絶叫系を乗り終えた後、海未の顔色はすっかり青ざめ、最終的には俺におぶられて戻ってくる結果になった。

「オエッ。よ、酔ってしまったよ……」
「……おまえさあ……」
「うぐぐ、け、けーた」
「なんだよ」
「ゲロ吐いたらごめんね」
「やめろ!人の背中で!」

 休む場所を探していると、木陰の下のベンチが空いていた。そこへ腰を下ろし、ぐったりとなってしまった海未を、しょうがないから俺の膝を枕にして寝かせる。

「うっうっ……きもちわるいよ……目がまわってるよ……」
「だから最初のやつでもうやめとけっつっただろ。自業自得」
「けーたはなんでヘーキなの?こういうの好きじゃないってゆってたじゃん」
「いやもうおまえ見てたら気持ち悪くもなれなかったわ」
「ず、ずるいよ、けーたの裏切り者……あとけーたのひざ枕とてもかたいよ……ひっくひっく」
「悪かったな我慢しろアホ猫」

 額を撫でてやると、しっとりと汗が滲んでいた。木陰の下とはいえ、気温は真夏日だ。医務室でちゃんと休ませたほうがいいだろうか。

「海未、医務室行くか?」

 声をかけるが、しかし海未はイヤイヤをする。

「ちょっと休めばだいじょぶ……」
「でも、暑いだろここ。医務室なら涼しいだろうし、ベッドもあるだろうし」
「やだ……行きたくないよ……けーたのひざ枕、かたくても我慢するから……」

 そんな泣きそうな声でぎゅっとしがみつかれたら何も言えなくなる。
 脱水症になられても困るから、さっき買ったスポーツドリンクだけは飲ませ、要望通りここでしばらく休ませることにした。

「体調戻らないなら、強制的に医務室だからな」
「うん……けーた」
「なに?」
「さっき、融通きかない頭でっかちとかゆって、ごめんね……ひっくひっく」
「なに感傷的になってんだよ。……いいよもう」



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