いつもよりずっと早い時間に目が覚めた。
ベッドから抜け出して、部屋のカーテンと窓を少し開ける。静かな早朝の、朝露のようなにおいを嗅ぎながら、新聞屋のバイクが通りすぎる音を聴いた。


(after since)6:30 am



 あたしは浴室へ向かった。鏡に映る自分を見ながら、乗り出すように背のびをして、慎重に、慎重に、耳に空いた小さな穴に針を通す。
 穴が安定してからもうけっこう経つのに、未だに少しこわいのだ。けーたはよくあんなにいっぱいしていられるな、と思う。
 こわくないの、と訊いたとき、あたしをいたずらな顔で笑っていた。思い出したその顔の、髪から覗く耳にはブラックのリングのピアス。

 だいぶ時間がかかってしまったな。けーた、なんて言うかな。笑うのかな。それとも、そっけない顔で、あたしの髪をくしゃっとするのかもしれない。
 鏡に映る自分を眺めながら考える。両の耳にいる二匹の猫が、あたしをいたずらに笑っているようだった。くすぐったい。
 でもあたしは、なんでもないふうな顔して、おかえりと言おう。朝ごはんをいっしょに食べよう。なんでもないふりで、いつもよりちょっとだけくっついてもいいよ。

 玄関のほうから鍵を開ける音が聴こえた。はやるような気持ちで、あたしは浴室を出ていく。



13.7.23



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