23
洞窟に背を向けて座って、目を伏せる。
大丈夫、大丈夫、まだ、緊張は切れていない。
すぐびっくりして、なんでもないことで泣いてしまうけれど、適度な緊張感があれば、大丈夫。
ただし、エイダのアレは予想外過ぎて、本当に、びっくりした。
『アレが彼女のやり方だったのだろうか。』
だから、私を巻き込まないでって何度言ったら
自分自身を抱きしめるようにして、震えの止まらない自分に苦笑する。
何やってるんだか、と眉を寄せて、膝に頭を埋めた。
「ヒサメ、大丈夫…じゃなさそうだな。」
声が聞こえて、少しだけ顔を上げる。
其処に居たのはやはりというかレオンで。
目を合わせることも、顔も見ることが出来ないで、もう一度頭を戻す。
「大丈夫、だよ。ちょっとびっくりしただけで。」
レオンが隣に座った。
おそるおそる、と言った表現があうのだろう、私の背中に手をおく。
ゆっくりと往復するその手に緊張が解かれていくのが、わかった。
「レオン、」
「っ、なん、だ?」
「私は、大丈夫だから。洞窟内をお願い。」
顔を上げて、彼を見る。
眉を下げながら笑って、膝をのばした。
私の様子に疑いながらも頷いて、洞窟内に向かうレオン。
ほっとして、私は、もう一度膝を抱えた。
『ホント、は、無理。』
ぼろぼろとこぼれ始めた涙に、情けない気持ちになる。
今日は半泣きで戦ったり、大泣きで戦闘していたけど、怖かった。
大きなあんなヤツらに勝てる気もしなかったし、実際、危なかったといえる。
でも、アンブレラ社がある限り、きっと、この恐怖は続くのだろう。
普通のゾンビですら、私は泣きたいのだ、恐怖で。
月の光で逆光になっているのを知った上で、洞窟を覗き込み、声が震えるのを必死に抑えて、呼ぶ。
「ジル、来てくれる?」
「ええ、今行くわ。」
「ありがとう。」