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その表情を見て、危険を察知した私は、瞬時にアリスに煙草を向け、微笑んだ。
「アリスも吸う?クリスから火を貰ってもらうことになるけど。」
「…?クリスから火を?」
「そ、煙草と煙草くっつけて、火貰うの、慣れてないと難しいけど。」
クリスは慣れてるらしいから、告げたところで、アリスが視線を泳がせたのがわかった。
色恋沙汰に、私を巻き込むのはやめてください
アブねぇ…絶対勘違いされてた。
ちょっと恥ずかしそうにしているアリスは多分自分が勘違いしてたことに気がついたのだろう。
嫌だよ、勘違いから三角関係が生まれました、とか、ホントやめて欲しい。
小さく苦笑しながら、アリスから飲み物を預かる。
ありがと、と苦笑して、クリスにゆっくり休みなよ、と声をかけた。
複雑そうな表情でああ、と頷いた彼はアリスと連れ立って、洞窟の中に入っていく。
響く足音が聞こえなくなって、はぁ…と深くため息を吐いた。
『マジ勘弁。』
煙草をその場に踏み消して、水を一口。
正直、アンデット相手にするよりキツいかもしれない、と考えて、首を振る。
だからと言ってアンデットの相手が楽とかではないんだから。
もう誰も来て欲しくない、と思っていれば、今度やってきたのはエイダ。
レオンと話してろよマジ、困る、本当に困る。
額に思わず手を当て、それから、どうしたの?と問いかけた。
「本当にレオンとは何もないの?」
「何も、って何が?恋愛系はなんもないと思うけど?」
ああ、これ、面倒なパターンだ。
直感的に気がついて、とりあえず座れば?とクリスが座っていた位置を進める。
無言のまま其処に座ったエイダは小さく呟いた。
「…レオンのこと、どう思ってるの?」
「正義感の強い、新米警察。時折冗談も言う。」
「そうやって、言い逃れるつもりなの?」
あー、面倒、此処で多分好きだよ、って言えばきっと彼女は満足なんだろうなぁ。
なんて、怒っているような顔をしているエイダを見つめて、苦笑する。
「確かに。嫌いじゃないよ。恋愛的にもね。勿論、人間として、友人としては好きだよ。」
「…そう、やっぱりそうなのね。」
「でも、だからと言って彼と恋人になりたいとは思わないよ。」
びっくりしたように、エイダが私を見た。