旦那 | ナノ



069
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「っ?!」

吃驚して、離れようとするが、にっこり笑っているだろう彼からは逃げられず。
とりあえず、体の向きを変えて、無理矢理口角をつり上げて、彰くん、と声を発した。

「どーしたの?氷雨ちゃん。」
「1on1やろーか。」
「オッケー、やっぱりジャンプ無し?」
「当たり前でしょう?身長差どれだけあると思ってるの。」

1つボールを受け取った彰くんが私にボールを渡す。
ダムダム、とリズム良くドリブルをついて、目の前の彰くんを見た。
真剣に私を見ながらも、口元を緩めるその様子に思わず、眉をしかめる。
此処は、富中エースでいきますか。
リズムを取って、走る。
すぐついてくるディフェンスにうわぁ、本気じゃんこれ、なんて思いながらも、こちとら負けられない。
異常な程に気迫が感じられて、それだけで負けそうになる。
ぐ、と眉に力を入れて、タイミングを計る。
…あ、これ無理だ、抜けない。
そうと決まればやることは1つ。
リズムを変えて、花形さんに。
斜め後ろに飛び上がりながらシュート。
ジャンプ禁止の彰くんは精一杯伸びるけど、若干足りない。
きゅ、とバッシュが地面と触れ合った瞬間にリングの方へ走る。
がん、と言う音がして外れたボールに向かって飛んだ。
私の手が届く前に彰くんの手にボールが落ちる。
速攻体を反転させて、彼の横に着いた。
此処はディフェンスに定評のある池上さんで!

「ちょっと、氷雨ちゃん、いつの間に池上さん…!」
「…さぁ?」

とりあえず、足を止めることには成功した。
此処からどう防ぐか、なんだけど…。
じっと、我慢する。
ふと、彰くんのリズムを口ずさんだ。
なるほど、シュートに行くパターンもタイミングも理解できる。
こういう使い方には気がつかなかったな…、にやり、思わず口角がつり上がった。
彰くんがチェンジする瞬間を狙って手を出す。
弾いたそのボールを追いかけ、そのままドリブル。
が、残念ながら、既に目の前に来た彰くんに防がれ、動けなくなる。
一瞬、どう動くか迷った隙にボールを取られた。
慌てて追いかけるが、本気を出してるのか、後一歩届かない。
そのまま、シュートを決められる。

「うわぁ…負けた。」

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