旦那 | ナノ



032
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「氷雨ちゃん、決まった?」

隣で笑顔を浮かべる宗くん。
左右に首を振る。
キョトンとした後、どれで悩んでるの?と首を傾げる。

「んと、これとこれで、悩んでるの。」
「へぇ、シーフード好きなの?」
「結構好き、後タラコに間違いはないと思ってる。」

言い切れば目を見開いた後クスリと笑う。
え?馬鹿にされた?と思いながらも、彼を見る。
と、馬鹿にした様子はなく思わず笑ってしまったと言うような表情だ。
なら許す、と誰に言うでもなく心で呟いて、タラコに決める。

「どっちにすることにした?」
「こっち!」

ニコニコしながら言って、反対側の牧さんを見た。
顔を向ければ微笑ましいと言わんばかりの目があり、気まずくなった。

「なん、でしょう?」
「いや、仲のいい兄妹みたいだと思ってな。」
「牧とだと親子みたいだけどねー!」

あっはっは、と正面の先輩が笑う。
いやいや、えぐるなよ。
なんて思っても先輩にその場で言う勇気はない。
ちょっと傷ついたような牧さんに慌てて言う。

「牧さん雰囲気が落ち着いてるし、顔立ちが整ってるから少しだけ年上に見えちゃうんですよ。」
「…。」
「宗くんはジャ○ーズ系の顔立ちですけど、牧さんは舞台・映画俳優系です。」

何とも言えない顔をしていたが、その後少しだけ微笑んでくれた牧さん。
そうか、と頭をポンポン、と撫でてくれる。
子供扱い…?
いや、別に嫌じゃないんだけど、ほら、よく言うじゃん、髪の毛は性感帯って。
頭撫でられると安心するけどドキドキすると言いますか。
ふと、キャプテンが声を上げる。

「なんで、牧はさん付けなんだ?」
「…牧先輩って間違えて、牧先生って言いそうじゃないですか。」

私結構昔から先生にママって言いかけるタイプなんですよ…。
ああ、どの学年にも結構あるよなそう言う事件、キャプテンが苦笑して頷く。
人の名前を呼ぶのが苦手っていうのもあるんだけど。
…親友の名前呼ぶのに3年かかったもんなぁ。
名字とか、あだ名とか、軽いノリとかならまだしも、こう見えてチキンですから。

「私のことも先輩としか呼んでくれないわよね?」
「あー…確認しないと、怖いんですよね、そんな呼ばれ方したくないって人間誰しもあるじゃないですか。」
「へー、経験者?」
「まあ、言ってもやめてくれなかったですけど。」

名前は精神的にきますからねー…と苦笑する。
自分の名前が好きなので、それをおかしな改変されたりするともう泣きたくなります。
なんて巫山戯ていってみれば、ぽかんとした表情のキャプテンと先輩。

「泣くのか?」
「そりゃ、私も人間ですから。メンタル弱いですし。」
「ホントに弱い奴は弱いとか言わないと思うが。」
「いやマジですって、基本的に情緒不安定ですよ。」

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