旦那 | ナノ



031
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「そっか、じゃあ、一人暮らしで困ったこととかあれば聞いてね?」
「うん、ありがとう。」

にこり、笑った宗くんに嫌な予感はきっと気のせいだと自分に言い聞かせた。
そうだよ、最近きっと疲れてたんだよ。
だから何か可笑しくなっちゃってたんだよ、私。
ふふ、と自分のネガティブ加減に笑う。
きょとんと見られて、アレ、可愛いなと思って。
と、くまのぬいぐるみを指差した…ら、まあ、ほら、咄嗟の時って利き手使うじゃん?
でもさ、私の利き手右手なんだ。
でさ、いま、手繋がってる訳じゃん?

「…ごめん、うっかり。」

速攻手を下ろして、目もそらす。
ミスすぎるだろ、繋いでるのすらわかんなくなるって…。
確かに体温とか、完璧に一緒になっちゃってるけどさ?
はは、とから笑いをすれば、気にしないで?と笑顔を浮かべる宗くん。
うん、君が手を離してくれれば全ては解決するんだけどな。
なんて思いながら、前を歩く先輩たちを見る。

「先輩たちは何が食べたいですか?」
「私、イタ飯食べたい。」
「んじゃ、あの店でいいんじゃねーか。」

キャプテンが指差したのは、1つのイタリアン。
値段もお手頃。
特に希望がなかった面子だったのか、そこに決まった。
席に案内された瞬間、皆固まった。
どうやって座るべきか。
片側はソファー(と言えばいいのだろうか)で、向かいはイス二脚。
ソファー側に3人座らなくてはならないことは目に見えている。
が、キャプテンは身長190越えで体格もなかなかのものだ。
牧さんも180はあって、結構がっしりしている。
宗くんも細く見えるが、それでも身長に見合った程度ではある。
一番いいのはソファー側に私と先輩と宗くん、なのだが。
上座とか恋人とか考えちゃうと…と言う感じになる。
だが、先輩に狭い方に座らせるなどできまい。

「私、ソファー側座りますね。」
「じゃあ、俺も。」

一度手が離れ、宗くんが奥に座る。
その次に私が座り、キャプテンが宗くんの向かいに座った。
残るは牧さんと先輩だ。
牧さんがさら、と隣に座ってくる。
…まあ、先輩にゆったりした席を譲るのがいいと思ったんだよね。
カップル同士対角でもいいかもしれないけど。

「…圧迫感を感じるのは気のせいですかね?」
「多分気のせいじゃないわね。」
「ですよねー…、まあ安心感はありますが。」
「…何事も言い方ね。」
「えっと、その言い方はちょっと…。」

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