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「それに、マッチさんやグルメヤクザの皆はそんなこと気にしないって言ってくれましたし。」
私としてはそれだけでかなり幸せです。
それからふと、マンサムさんの方を向く。
マンサムさんは、ご存知だったのではありませんか?
聞けば、彼は数拍おいてから、仰々しく頷いた。
「それについて、IGOで検査する気はないか?」
「それは、与作さんにも言われましたが、お断りさせていただきます。」
私の言葉に一瞬眉を顰めたマンサムさんに思わず苦笑して、眉を下げる。
「ああ、でも…この間ご連絡頂いた依頼は、お受けいたします。」
「…そうか。」
静かに頷いた様子を横目で確認してから、一度深呼吸をした。
ふわり、甘い香りがする。
首を傾げながら匂いの元を辿ると、どうやら、ココさんのようだ。
立ち上がって、少しだけココさんに近寄る。
やはりというか、甘い香りが強くなった。
その香りには、心安らぐが、同時に仄暗いものを感じる。
例えるならば、そう、睡眠薬のような。
「ココさん、」
「なんだい?」
「ココさんは、毒を扱う方ですか?」
息を飲んだ音が聞こえる。
その音にやはり、と目を細めて、首を左右に振った。
「別に、責めようと思っている訳じゃありません。ただ、」
「ただ?」
「ただ、甘美に薫ったので。」
私の言葉に驚いたような表情をする目の前の彼。
その反応に思わず、ふふ、と笑った。
「毒は薬、薬は毒。量さえ間違えなければただの薬でしょう?」
「なんか、実感がこもってんな?」
「ええ、市販の薬で死にかけたので。」
にこり笑えば、唖然としたような表情に出会う。
市販の薬、とは言っても、此方では食材だ。
だから、私の体には基本的に合わない、問題の無いものもあるのだが、そういうのは別のものから取り出されたもの。
ただ残念ながら、食材となった瞬間、何故か私の体に拒否反応が起こる。
まあ、考えられるのはカロリーだろうとは思うのだけれど…無い栄養素とかそういうのかもしれない。
なんて、どうでもいいんだけど。
「調節できるなら、頭痛薬作ってもらいたいと思いまして。」
「…え?」
「市販の頭痛薬を全て試したんですが、どれ使っても、最低2日は目が覚めなくなるので…。」
流石に困ってしまって、そう告げれば、ぽかんと口を開いたココさんが、こくりと頷いた。
ボクが力になれるなら、と微笑んだ彼はじゃぁ後で話そうか、と続ける。
ありがとうございます、と薬師をゲットすることが出来たことに頬が緩んだ。
(「これでマッチさんたちにも心配かけずにすみます。」)
(「マッチ?」)
(「はい、私の大切な人です。」)
(「それって、恋人だしー?!」)
(「いえ、違いますよ。私は人間ではありませんので、お断りさせていただいていまして。」)
(「ってことは、告白はされてるってことだしー!」)
(「…ああ、まあ、その辺は小松さんに聞いてもらえれば。(って、トリコさんいたー!死ぬ!!)」)