胸うさ | ナノ



平和な日常
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平和な日常

それは、センチュリースープを取りに行く前の日常。
マッチの家で二人、穏やかな時間を過ごしていた。

「マッチさん、どうしたんですか?」

お茶を入れる自身を見つめ続けるマッチに気がついてか、氷雨は首を傾げ問う。
ソファーに座るマッチはいいや?と微かに笑うだけで、何の理由も口にしない。
そのことに少しだけ、不満に思ったのだろう彼女は、ぷく、と頬を膨らませた。
その表情に苦笑した彼は、こいこい、と手招きをする。
入れたお茶を持って、氷雨が近づいて行くと、マッチは甘く笑む。
その笑顔を視界に入れないよう彼女がテーブルにお茶をおいたのを見計らって、その手を引いた。

「っ?!」
「働き者だと思ったんだよ。」

引っ張られた体は流れるような動きで、マッチの足の間に収まる。
それはもう、定位置となっているからか、見ている方は特に違和感を覚えることはない。
…今日は部屋に二人なので誰も見てはいないのだが。
しかし、される方はそうではないらしく、頬を静かに赤く染めた。
色づく頬を横から見て、満足そうに笑ったマッチは、その髪に口付ける。
ピクっ、と反応した氷雨は恨めしそうに見上げて、ばか、と口にした。

「悪いな。」

全然悪く思っていないだろう声色で、目を細めて口にするマッチ。
そのどこか楽しそうな様子に氷雨はふぅ、と一度ため息を吐いて、大きな胸板に寄りかかった。

「もー、いいです。」
「本当か?」
「ご褒美貰ったと思っておきますから。」

ぷい、とマッチが覗き込んでいた方とは反対側に顔を背けるが、その耳は赤い。
その可愛らしい反応に頬を緩めるマッチは、両腕に力を込めた。
言ってるとこととやっていることの矛盾に気がついた氷雨は、耳まで真っ赤にする。
きっと、抱きしめられていることも理由の1つではあるのだろう。

「ご褒美、か?」

からかう声色のまま耳元で囁くマッチ。
無言で固まって、どうにかやり過ごせないかと視線を彷徨わせる氷雨。

「…お茶飲みませんか?」
「くく、いいぞ。」

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