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何回か瞬いて、反応のない皆さんに少し落ち込んで、蓋を閉める。
それから、料理をもう一度仕舞おうと動いたら、小松さんに止められた。
「た、食べさせてください!氷雨さんの料理。」
気を使わせて申し訳ないと感じながらも、嬉しくて、頷く。
口元が緩むのを自覚しながら、小松さんに全部差し出した。
ありがとうございます!と声を上げて、小松さんは蓋を開ける。
本来なら香りが広がるが、甘さで鼻が麻痺しているのか、よくわからない。
何度か鼻をならすが、甘ったるい…なんだろう、バニラとか、杏仁豆腐みたいな甘い匂いしか感じない。
首を傾げながら、気がつけば目の前の小松さんが私の作った料理を口にしていた。
「っ!?」
「だ、大丈夫ですか…?」
吃驚したような顔をした小松さんに肩を揺らして、覗き込むように顔を確認する。
毒とか、入ってないけど…食中毒とか?と思いながら、見つめていれば、にこり、と笑う。
「とっても、美味しいです!これ、何ですか?」
「え…ネルグの近くで獲れる、恐竜みたいなののお肉、と普通のクレープとお野菜、です。」
名前なんぞ知らない。
獲れたものの中で、使ってみたら美味しかったという理由で定期的に狩っているだけで。
勿論、数が激減するといけないので、本当に時々と言っても可笑しくないくらいのスパンだ。
美味しそうに食べてくれる小松さんに釣られたのか、他の皆さんも手を伸ばす。
のんびりとその様子を見守れば、黒タイツ…ココさんが君は食べないの?と首を傾げた。
トリコさんと小松さんが此方をじっと見てくる。
思わず視線を逸らした上、数歩後ずさった。
「氷雨さん!また何も食べてないんですか?!」
「え、や…ほら、私の体すごく燃費いいから。」
「燃費とかの問題じゃありません!前はいつ食べたんですか?」
「えっと……1、2、3…9?」
指折り数えて、首を傾げてみせれば、驚いたような目がいくつも突き刺さる。
中でも、目が据わり始めている小松さんは聞き返した。
「9?!9回も食事抜いたんですか、3日間何も食べてないんですか?!」
「え?9日間だよ?あと、水分摂取もしてない。」
きょとん、と言い返せば、小松さんがにっこりと笑った。
そして、手元にあったセンチュリースープを指し示す。
「まさかとは思いますが、これ一舐めを食事に入れてませんよね?」
「………ダメなの?」
「ダメに決まってるじゃないですか、なんですか、死にたいんですか?!」
「大丈夫、全然死なないです。」
ぐ、とサムズアップをしてみれば、許しません、と小松さんが告げる。
首を左右に振っても聞いてくれそうにない。
キョロキョロと周りを見渡すが、助けてくれそうな人はいない、というか、すごい目で見られている。
具体的に言うなら、これは人間か?って物語っている目と、信じられないって言いたそうな目。
ヤバイ、逃げ場がない。