胸うさ | ナノ



2
しおりを挟む


途中、様々な食材の匂いに若干気持ち悪くなったり、人ごみの所為で頭が痛くなったりしたが、なんとか持ちこたえる。
デパートに入って、やっと人が少し減った。
包丁売り場について、包丁を見る。
色々素晴らしい包丁がたくさんある中で、善し悪しがほとんどわからない私は、値段とそれから、特殊か否かを見るだけに留めた。
ぶっちゃけ、どの包丁より、私の薙刀の方が、切れ味はいいだろうし、使い勝手もいいのだ。

「決まったか?」

後ろからかけられたマッチさんの声に首を左右に振る。
ぽんぽん、と頭を撫でられ、ゆっくり決めろ、と行ってから、思いついたように告げた。

「俺は他にやることがあるから、そっちに行く。此処で待ってろ。」

こくり、頷いて、その場でマッチさんを見送る。
暫く包丁を見て、良さそうなものを3つぐらいに絞った時だった。

「うぇ、まま〜。」

泣き声が聞こえてきて、振り返る。
と、そこにいたのは、小さな女の子。
近くに親と思わしき大人はおらず、思わず、声をかけてしまったのは、悪いことじゃないと信じている。


そして、冒頭に戻る。
え?冒頭が前過ぎて、思い出せないですか?
…彼女の母親を見つけたのはいいのですが、今度は私が迷子になったんです。
ただ、外に出たりはしていないから、多分デパートは此処でいいはず。
連絡通路とかで繋がってたりしない限りは…。
階数は、えっと…どうだったっけ?お、思い出せない。

「…とりあえず、お店の人に聞こう。」

が、何故だろう、こういうときに限って、お店の人に全然会えない。
買いたくない商品を勧めてくるわりには、何でこういうときに限って居ない訳。
やっと見つけたと思えば、他のお客さんが真剣な顔で話してたりするし。
自力で帰れってことですか…。
半泣きになりながら、記憶をたどって、デパート内を歩き回る。
もう多分、1時間程ぐるぐると歩き回っているのではなかろうか。
記憶と掠るところが所々あるのだが、すぐに飛散してしまい、まるで元の場所に帰れない。
絶望すら感じて、どこに行けばいいんだろう、なんて思っていたその時だった。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -