胸うさ | ナノ



グルメタウンにて
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グルメタウンにて

「本当にありがとうございました。」
「おねーちゃん、ありがとー!!」

笑顔で手を振ってくる親子に手を振る。
彼らが見えなくなったところで、ため息を吐いた。
…シャレにならない。
迷子の親を捜して、私が迷子になるなんて。


「氷雨、グルメタウンに行くが、ついて来るか?」

始まりはマッチさんのその問いかけだった。
私は迷うことなく首を左右に振る。
グルメタウンなんて凄く引かれるが、私はグルメIDを持っていない、というか、何それ、って感じだ。
つまり、膨大な金額が持っていかれる。
で、そのお金を出してくれるのはマッチさん。
無理無理、と首を振る。
そもそも私はあまり食事に惹かれないし。
と、思っていれば、あからさまにため息を吐いて、目の前にやってきた。
それから身を屈めて、座っている私に顔を近づける。
じっと見られて、居心地の悪さから目を逸らす。

「言っておくが、お前のグルメIDは組長が作ってたからな。」
「…作れるものなんですか?」
「さぁ?組長には作れるものだったんだろ。」

フッと笑んで、そのまま手を引かれた。
結果、到着したのは、気持ち悪い位に人がいるグルメタウン。
今回はマッチさんの本宅の包丁を新調するらしい。
使うのは基本私であることから、聞いてはみたものの、私が来ることは必須だったらしい。
ちなみに、初めてマッチさんに連れて行ってもらったあれは、別宅です。
本宅はネルグのもっと治安のいい方にあります。
どん、と人にぶつかられて、目の前のマッチさんが一瞬見えなくなった。
冷や汗が流れたが、すぐに白いスーツが視界に入って、慌てて近寄る。

「逸れるなよ?」

少しだけ困ったように笑ったマッチさんの手に自分の手を重ねた。
驚きながらも仕方ねぇな、と苦笑したマッチさんに少し恥ずかしく思い、目を逸らす。
でも、逸れて迷子になるよりはましなはず…!
そのまま、盾になるように進んでくれた彼はデパートに向かった。

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