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「…どうした?」
いつもらしからぬ、私の行動に不思議そうな声が響く。
「ちょっと僕、飲みもの買ってきますね。」
ここにあるのおじさんたちの好みなんで。
突然そう言って、滝丸少年が席を立った。
じゃぁ、俺も行く、とシンが立ち上がり、彼の肩に乗っていたさうもぎゅあ!と鳴く。
「だったら、俺も飯買いてぇから行くぞ、ほら、ラムも行こうぜ。」
ルイに引っ張られたラムがちら、とこちらを向いて、ふと笑った。
仕方ないヤツらだな、とマッチさんが財布を投げて、ルイがありがとうございます、と受け取る。
あっという間に私とマッチさんだけが残された。
明らかに残された、と言った体だ。
「氷雨、」
こちらを向かずにマッチさんが声を上げた。
窓の流れる景色に視線を向けて、黙り込む。
それから、口を開くが、なんと言っていいのか分からなくて、また口を閉じた。
抱きしめていたマッチさんの手を離して、自分の膝を抱きしめる。
離した手に指を絡めて、ぎゅっと力を入れて、一度だけ深く息を吸った。
「荒唐無稽な話、なんですが。」
「ああ、」
ぎゅう、と力強く握りしめられた手に後押しされるように言葉を続ける。
「私が、この世界の人間じゃない、って言ったらどう思います?」
息を飲んだ音が聞こえた。
その表情が怖くて、私は、視線を落として、それでも、手は離せないままで。
じわり、視界が歪む。
「…異世界ってのは、どんなとこなんだ?」
暫く沈黙してから続いた言葉。
思わず顔を上げれば、何とも言えない表情をしたマッチさんが困惑している。
食事や生活、この世界との相違点について、不思議そうな声で続けられて。
ぽかんと口を開けてしまって、それから、すぐに下唇を噛んだ。
くるしくなって、らくになって、たまらなくなって。
私は、マッチさんに抱きついた。
ぼろぼろと涙が零れ始めて、止まらない。
小さく笑う声が聞こえて、頭を撫でられる。