胸うさ | ナノ



帰り道

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何これ、どういう状況?
寝ていた私が悪いの?いや、目が覚めたら電車の中、は許せるよ?
でもね、でもね…流石に目覚めたら電車の中でマッチさんの膝に座ってて、滝丸少年にガン見されてて。
ついでと言わんばかりに、三人組とさうは相変わらずというか、通常運転というか、こっち見てニヤニヤしてるし。
…アレか?これは新手の嫌がらせか何かか。
しかもね、言い難いんだけど、案外、視線集中してるんだよ。
身内だけじゃなくて乗客皆さんの。

「おはようございます、氷雨さん。」
「…おはよう、滝丸少年。」

にこり、目の前で笑った彼に、複雑に思いながらも挨拶を返す。
…え?寝顔見られた羞恥心?今更じゃね?
アイスヘルで一緒に過ごしてるんだし。
なんて、誰に言っているのかわからないことを心の中で呟いてから、首を逸らしてマッチさんを見る。

「おはようございます、マッチさん。」
「よく寝てたな。」
「それは、…安心するから、ですよ。」

いつものように誤摩化してみても良かったのだが、素直に言ってみた。
が、すぐに恥ずかしくなって、首を正面に戻すと、三人組が驚いた顔をしている。
…サムズアップは阻止できたらしい。
滝丸少年は、何とも言えない不可解な表情をしている。
そんなに、私の発言は衝撃的だったのだろうか…?
首を傾げようとするが、マッチさんに妨害される。
かなり強い力で抱きしめられて、瞬間的に息が詰まった。

「…そうか。」

すぐに力が弱まった、かと思えば、緩やかな声色で囁かれる。
ぞわぞわ、と背中に衝撃が走った。
悪寒ではなかったが、何だろう?
なんて、首を傾げる暇もなく、右肩に衝撃。

「マッチ、さん?」
「…今日は、素直なんだな。」

右耳付近で低い声で言われた瞬間、思わず耳を抑えてマッチさんから逃げた。
なに何なに?!
ピクって、体が跳ねたよ!?
なんというか、ゾワッとしたんだけれど、なに、と思いながらマッチさんを見る。
暫く、考えたかと思えば、フッと笑った。

「びっくりさせたな、悪い。」

ほら、来いよ、と言われ素直にマッチさんに近づく。
吃驚した、と思いながら、隣に座った。
何となく離れがたくて、ぴったり横にくっついてみる。
背もたれの上にあった腕を引き寄せて、抱きしめた。

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