胸うさ | ナノ



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その言葉に、答えようとしたそのときだった。
マッチさんが後ろから、ぎゅう、と抱きしめてくる。
いきなり何?!何かあったの!?と思いながら、首を逸らした。
不快そうに眉を寄せたマッチさんは、サニーさんや与作さんをじっと見ている。
それを見て、唐突に理解した。
マッチさんは、私を、守ってくれてるんだ。

「マッチさん、大丈夫です。」
「…俺が嫌なんだ。」

不機嫌そうにしか見えないけれど、どこか泣きそうな空気を纏ったマッチさんに嬉しくなる。
左手を伸ばして、マッチさんの左耳のピアスに触れた。

「私は、1人じゃないですから。」

大丈夫です。
もう一度、念を押すように笑って、それから、マッチさんの腕の中から抜け出した。
マッチさんは少しだけ視線を彷徨わせてから、わかった、と笑う。
1度目を伏せて、息を吸った。
某カロイドの中毒性のある、あの曲。
服装があのパーカーになるが、気にはしない。
念じるのは、ただ1つ、踊れ。
歌っている最中で、目を開いてみれば、マッチさん以外が踊っている。
ちなみに、マッチさんが入っていないのは、“さっき治した=マッチさんより私のレベルが高い”が証明されているから。
あと、言っておくと、人間に限定しなかった所為で、お花と鳥?ドラゴン?幻獣?さんも体を揺らしている。
一曲が終われば、疲れた、その場に座り込む面々。
様々な理由があるようだが、私には関係ない。

「…私が一番強いみたいです?」

首を傾げながら言えば、全体的に信じられねぇという空気。
まあ、ですよね。
なんて、1人肩をすくめた。
と、そのとき、チューリップから、シンとラムとルイが吐き出される。

「さう!」
「ぎゅあ!!」

胸元に入っているさうをラムとルイの方に投げ、同時にシンの落下地点に向かう。
どん、と3mの戦闘モードになって、二人を片手ずつ抱きとめたさうにほっと一息。
少しの時間差があって、シンが私めがけて降ってくる。

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