胸うさ | ナノ



2
しおりを挟む


彼の言葉で、皆の目が和らいだ。
ほっとして、滝丸少年に笑いかける。
彼は驚いた様にしてから、にこり、と笑ってくれた。
それで空気が戻ったのか、小松さんが節乃さんに話しかける。
3人を運ぶために3人が乗れる担架を貸してくれた節乃さんに一礼してから、彼らを乗せた。
うむ、やはり軽い…。
でも、不思議なのは20キロとかそんなくらいに感じられるんだよねぇ。
動物…っていうか、猛獣はもっと軽かったりするんだけど。
もしかして、密度の問題かな?
うーむ…謎だが、まあ、その辺はどうでもいいか。
さうに大きくなってもらって、片方をもってもらう。
反対側を持とうとすると、驚いたような鉄平さんに止められた。

「俺が持つよ。」
「え、あ…はい、お願いします。」

真剣な表情に驚きながらも、頷くと、にっこり、表情を緩めてくれた。
リムジンクラゲから降ろしてもらい、小松さんと節乃さんを見上げる。
上から、小松さんが声を張り上げた。

「マッチさんも!!氷雨さんも!!滝丸さんも!!待ってて下さい!!!必ず作りますから!!センチュリースープ!!」
「無理はしないで下さいねー?!」
「頑張って小松くん!!」

私と滝丸少年の声に隠れて、マッチさんが腕を見せてもらうぜ、と言っていたのが聞こえた。
機嫌直ったのかな…?と近づいて、裾を引っ張ってみる。
振り返ったマッチさんはいつもと変わらない笑顔を浮かべてくれた。
ほっとして、抱きつく。

「氷雨?」
「マッチさんの馬鹿。」

悪態をつきながらぎゅうと力を込めれば、ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
悪かったな、と小さく聞こえた声にこくり、1つ頷く。
頭を撫でていた手が顎に移動し、指を掛けられて、ぐい、と強引に顔を上げさせられた。
少しだけ潤んだ目に驚いたのか、もう一度、悪かった、と告げた彼は、私の目尻に唇を寄せる。
ふわり、軽く押当てられたその唇に目を伏せて、抱きついていた手を腰から首に移した。
片手で、顎にかかっているマッチさんの手を引き寄せて、掌に唇を押当てる。
マッチさんが嬉しそうに笑ったのがわかった。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -