3
いや、そっちのお礼はさっきしたよ。
ま、いっか。
なんか癒してくれる予感がするし。
ああ、でも女の子に会いたいな。
「ねえ、滝丸少年。」
「はい?」
「女装してみる気はない?」
「なっ、ある訳ないじゃないですか!」
驚いたように叫ぶ少年。
うん、可愛い。
が、マッチさんに聞かれていたようで。
「氷雨、あまり困らせるな。」
「はーい、あれ、マッチさんは毛皮着ないんですか?」
「ああ。」
「じゃー、一緒に入りましょう。」
無理だろ、と言われたのも気にせず、そのまま抱きつくように負ぶさる。
「…氷雨、」
「だって、さうがいなくて寂しいんだもん。」
ぎゅう、と腕に力を込めて、逃げられないようにする。
マッチさんは一度はぁ、とため息を吐いて分かったよ、と私の頭を撫でた。
えへへ、と笑ってみせれば、ふと気がついたように、抱き方を変えられる。
ぐるり、と視界が回った。
子供抱きにちかいが、片手で抱き上げられていることに焦る。
「ま、マッチさん?!」
「後ろ確認してろ。」
「ちが、そうじゃなくて、片手。」
お前の軽さなら問題ない。
そう言いきったマッチさんはそのまま歩き始めたトリコさんについて歩く。
後ろでサムズアップしてる3人とさうが視界に入って若干イライラするんだが…。
この気持ちは何処に発散すればいい?
なんて、思っているうちに、氷山に到着。
「マッチさん、降ろして下さい。」
「降りたいのか?」
「マッチさんの手が心配だもん。」
「だから、お前ぐらいじゃ何ともならないって言ってるだろ。」
「だからそんなに軽くないよ、もう。」
困った、と眉を下げれば、仕方ないな、と降ろしてくれるマッチさん。
小松さんと滝丸少年が私をがっつり見てくる。
首を傾げて二人を見ると、二人は乾いた笑いを零した。
え?何?と思いながら彼らを見ていると、小松さんが口を開く。
「元気、ですね、氷雨さん。」
「ん、もっと過酷な旅してきたからねぇ。」
へら、と笑いながら伝えた。
ていうか、私歩いてないし、運ばれてたし、なんて思いながらも過酷だったあの旅を思い出す。
うん、あのあと世界地図見て、馬鹿みたいな遠回りをしてた事実を知ったんだよ。
本来なら直進で3ヶ月もかかんないところを、若干ズレて歩いた所為でぐるりと世界一周的なノリで3年かかった。
思わず泣いたよね。
周りの皆さんがおろおろしたけど、私は自分のどうしようもなさにおろおろしたよ。
なんて、思い出してから、慌てて小松さんと一緒にマッチさんたちを追いかける。