胸うさ | ナノ



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視界に親指があがった姿が目に入った気がするが気にするものか。
気のせいに決まっている。
なんて、ぼんやりと考えながらもう、マッチさんを止めるのは諦めた。
ここでまってろ。
と降ろされたのは壁際…むしろ角。
何かに追いつめられてるのか、と考えてしまった自分は何か可笑しい。
つーか、ばかだと思う。
なんて考えていたら薄いが、かなり暖かい支給品の大きい毛布を1枚持ってきた彼。
少し不機嫌そうにしながら、近寄ってくると、一度私を立たせる。

「マッチさん?」

返事は無く、そのままマントのように毛布を肩にかけ、座り込んだ。
手を引かれ、彼の目の前に膝をつく。

「そうじゃねぇだろ?」
「へ?」

腕を力強く引っ張られ、体のバランスを崩した。
あ、と思ったときには既に、体の向きまで変えられて足の間に座らせられている。
そのまま抱えられるように腕が回り、拘束された。
………1つだけ、1つだけ言わせて欲しい。

親指を上げるな。

付け加えるなら、ナイス、って言いたげな笑顔はやめろ。
もう疲れたよ、パトラッシュ…。
ぽん、と肩に軽い衝撃。
目だけを動かすと綺麗な金髪が見える。
ああ、マッチさんの頭か。

「あ、寝るんですね。どれくらいで起こせばいいですか?」
「2時間くらいで起こしてくれ。見張りを変わる。」
「了解しました。…おやすみなさい。」
「ああ。」

静かな声から、一定の呼吸音に変わるのは早かった。
多分、結構疲れてるんだと思う。
けどさ、この体制の方が疲れると思うんだけど如何だろうか?
どう考えても、辛いっしょ?
だったら、ちゃんと寝袋にくるまって寝た方が楽だと思うんだけどなー…。

「氷雨、」
「はい?…トリコさん、どうかしたんですか?」
「いや…横座ってもいいか?」
「いいですけど。」

もっと広いところとかあるよ?いいの?
なんて思いながら、隣…正確にはマッチさんの隣に座ったトリコさんを見る。
マッチさんが起きないようにそーっと。

「疲れないのか?」
「大丈夫です。それに、あったかいですから。」

いい人だなーと思いながら話す。
少し心配そうに首を傾げていた彼に安心してもらうよう、微笑んだ。
人肌ってあったかいって言うじゃん?あれマジだから。
本当に、なんだろう、心地よい暖かさって言うの?
マッチさんは筋肉がしっかりついているからか、意外に体温が高い。
若干冷え性のような感じも受けるが、女性程でもない。
まあ、つまり、すごく暖かいってことだ。

「トリコさんて身長高いですよね?」
「ああ、まあ、2m越えてるからな。」
「大台…マッチさんも結構高いですけど、2mいってないので、新鮮です。」
「そうなのか?」
「はい。なのでこの通りすっぽり包まれちゃうんですよ。」

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