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「邪魔、何、死にたいの?」
「シャアアアアアアアッッ」
え、なに、すげー勢いで後ずさりされたんだけど。
そんないじめみたいなことされたら切なくて死ねる。
とりあえず、ぼさぼさになった髪を掻き揚げた。
ふぅ、と一息つけば、人間が全員私を見てる。
アイドルってこんな居心地が悪いのかな、つらい。
思わず、眉を寄せると、その中から優しげに名を呼ばれる。
「氷雨、」
そちらを向き、思わず、笑む。
駆け寄って、目の前で待機。
彼は苦笑し、私の髪を優しく撫でた。
「よくやった。髪縛ってやるから、後ろ向け。」
「はい!」
くるり、と体の向きを変える。
と、目の前にシン、ラム、ルイの3人が居た。
3人もよくやったなとか、流石だな、と口々に褒めてくれる。
思わず顔が赤くなった。
「あれ、氷雨、照れてんじゃね?」
「ばかルイ、照れてないし。」
「でも、顔赤いぞ?」
「シンは余計なこと言わないの。」
「じゃあ、風邪引いたのか?」
「ごめん、ラム。照れたって認めるから、真剣に心配しないで。」
そうしている間も丁寧に髪が梳かれる。
手の動きからも甘さを感じられてしまうような、ゆっくりと私を気遣ったそれ。
俯きたいが、そんなことをしてはマッチさんに更なるお手数をおかけするだけだ。
それはいけない。
というわけで、照れてる上に照れることをされ、真っ赤な顔を隠せず、更に赤くなる悪循環。
「ゴム貸せ。」
「はい。」
少し引っ張られる感覚が暫く続き、その後、静かな声で終わったぞ、と言われる。
首だけで振り向き、ありがとう、と笑う。
何も言わず、ぽんぽんと頭を叩いて彼は優しく微笑んだ。
見ていたら恥ずかしくなることがわかっているので、くるり、と正面に向き直った瞬間。
「でかああああああい!!」
と言う叫び、に目の前の大きな氷。
ビックリだね。
え?ノリが軽い?そんなの今頃でしょ。
後ろからモッコイ氏?が食運を祈ってくれたあたりで、氷塊が落ちてきた。
いざという時、4人を助けられる位置に移動する。
いや、勿論なんとかできそうだけど、ほら、トリコさん?だっけ?がなんとかしようとしてるし。
いいかなーって思って。
「5連、釘パンチ!」
と、叫んだトリコさんによって、氷は破壊された。
うん、良かった、って思ったけど、5連じゃ多すぎたのか、それとも、砲撃があたっていたのか。
もう1つ、小さめの氷塊が降ってきた。
あれー、ヤバくね?
なんて思いながら、トリコさんを見る。
うん、任せても問題なさそうだけど、申し訳ないよね。
たた、と助走をつけて、トリコさんの横から跳ぶ。
ほい、と氷塊に指を突っ込んで、そのまま後ろに投げた。
指がちゃんと抜けてちょっと安心。
その反動で、氷側に向かい、垂直に着氷。
船を越してその後ろに氷が落ちたのを見て足に力を入れる。
それから、マッチさんの近く降りて、ふう、と一息。
「無茶はするなよ。」
「これくらい無茶じゃないよ、昔はもっとやんちゃしてたから。」