胸うさ | ナノ



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そう言えば、眉を寄せたルイが口を出す。

「…昔?」
「うん、壁越える前は、空中戦してたもん。」
「…何とだ?」
「鳥類?異常に仲間呼ぶ奴でめっちゃ辛かった記憶がある。」
「異常にって、」
「とりあえず、1000くらいはいたと思うよ。」

気持ち悪いんだよ、目が真っ黒で、翼が無いけど異常に飛ぶの。
それから、嘴がおでこの方からこう、ぐわってなってて、サイズ?えっと、5mくらい?
口の中が歯でいっぱいで、チキンスキンが気持ち悪かった。
そう説明すると、眉を寄せたマッチさん。
ふと、口にする。

「壁って、何だ?」
「わかんない。とりあえず、すっごく高くて、めちゃくちゃ警備されてた。」

この世界で生活して知ったのは、彼方はグルメ界だったってこと。
でも、流石にそれは言えないから、私は誤摩化します!
て、そんなことしているうちに、ヘリの準備が整ったらしく、さっさと乗れと言われました。
乗り込み、移動。
氷棚の上に降ろされ、ふと、ラムに聞かれる。

「ライタースーツは…?」
「なんか、数が足りなかったらしくて、借りてないよ?」
「ばっか、お前、」
「大丈夫!まだ白い息出てないし。こんな位なら問題ないよ!さうもいるし。」

ほら、といいながら、はー、と息を吐く。
息は白く出ない。
他の人たち――トリコさんでさえも――が喋るだけで白い息になっている中、私は問題ない。
やっぱ人間離れしちゃってるなー…。
なんて思いながら、崖を上り始めた皆さんを下から見上げる。

「氷雨、上れるか?」
「うん、足がかかるとこがあるし…連れてってあげようか?」
「…遠慮しておく。」

マッチさんの質問ににこりと返して、信じられないと言う目をしたシンに提案する。
シンは口角を引きつらせ、首を振った。
そんな凶暴な上り方はする気ないけど…何でそんな焦ってるんだよ。
じゃあ、みんないってらっしゃい、後から一気に登るから。
そう、笑って、彼らを見送る。
下にいるのはもし誰かが落ちたとき庇う必要があるからだ。

「おい、登らないのか?!」
「登りますよー。」

じー、と見ているとどうやらトリコさんと小松さんが上についたようだ。
うん、そろそろあがり始めようかな。
軽く地面?氷?を蹴って、跳び上る。
あがりきったあたりの氷の凸凹に足をかけて、更に上へ。
それを繰り返せば、下の方を登っている人たちを抜いて、頂上に近づく。
最後の最後でくるりと前宙して、小松さんの隣に立った。
驚いたように見られたが、知らんよ。
なんもしてないしー。

「お前、大丈夫なのか?」
「へ?」
「ライタースーツ、着てねぇから。」
「ご心配ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ、このくらいなら適応できますから。」

びゅおー、と激しい風が吹く。
んー、流石に指先とつま先が冷えるなー。
なんて思っていたら、トリコさんが風上に立って風を防いでくれた。
気がつかなくて悪いな、と言ってくれたが、むしろ此方が申し訳ないというか…。
とりあえず、此処は素直に笑ってお礼を言っておくべきだよ、ね?
てか、マッチさん以外に私を「性別・女性」扱いしてくれた人は珍しくてテンパる。

「あ、ありがとう…。」

いや、ほんと、「性別・お姉ちゃん」扱いは多いんだけどね…。
はは、いいさ、基本は「性別・不詳」扱いなんだから…いい方なんだよ。
なんて頭の片隅で思う。
…何か目を逸らされてる、あー、これは…引かれた?顔芸してた?つらい。
なるべく顔はポーカーフェイスしようと頑張ってたんだけど…まあ、無い物ねだりでした。

「いや、…何か困ったら言えよ。」
「え、あ、はい。」

(「やばいぞ、氷雨が誘惑されてる!」)
(「何?!アイツ、副組長と言うものがありながら…、デレデレと!!」)
(「いや、別にデレデレはしてないんじゃないか…?」)

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