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少し驚いた様子の彼に不思議に思いながら、クッキーに視線を向ける。
「…何やってんだ?」
「っ?!さ、冷ましてるんです。」
予想外すぎる。
気がつけば真後ろに居て、私の両脇に手をついてるとか。
まじ、身動きとれねぇ。
つーか、191cmでかいよ。
…これでも、自分の世界じゃ、ちゃぁんと平均以上あったんだけどね。
まあ、平均ちょっとプラス程度だけどさ。
それでも、隣に立つと私の頭上に顎があるんですけど。
「…マッチさん、」
「何だ?」
「ふわぁぁあっ、そこで話すのだめです。」
マッチさんが私を抱きしめるような体制に変わったからか、丁度、耳元に吐息があたる。
やめてー、照れるとかじゃない、悶える。
自分の顔が整ってるの自覚してないのかこの人は!
いや、自覚してないよな。
「何故?」
とか、もう一度囁くんだから。
しかも、あれ、何か抱きしめられてる気がする。
…え?どういうこと?
うん?何かおかしな空気じゃない?あれ?これ危ない?
「氷雨、」
「なんです、っ…。」
え?
どう、…え?
ちゅ、って、音、え?
「真っ赤だぞ?」
「う、あ…、」
「馬鹿、」
「っん、ふぁ、」
気がつけば、向き合う形にされている。
ちょ、上手くね?
なにこれ、力、抜ける。
思わず、マッチさんの服を握った。
勿論、顔なんて見てられないから、目を力一杯瞑る。
ぎゅう、と抱きしめられている手に力がこもった。
どれくらい時間が経ったかわからないが、解放される。
顔が見られず、鎖骨のあたりに頭を押し付けた。
「いきなり、どうしたんですか。」
「お前が、可愛すぎるのが悪い。」
「かっ…!?」
マッチさん、多分頭打った!
どうしよう、壊れたよ、え、ネルグの危機!!
「何変なこと考えてんだ?」
「いや、ネルグの危機、」
「は?」
「だって、マッチさんが壊れたから。」
「壊れねぇよ。」
ばか、と優しげな響きで声が聞こえる。
やさしすぎるよ、空気と声が。
甘いよ、どうしてくれるんだよ、うわー!!
発狂しそう、恥ずかしすぎて、気が狂う。
「…く、っきー食べませんか。」
「くく、いいぞ。」
手を離してもらい、クッキーをちょっとお皿に盛って、リビングのテーブルに置く。
それから、紅茶を入れた。
正面に座り、どうぞ、と勧める。
あ…と思い、数枚クッキーを取り、隣の部屋に向かった。