正義 | ナノ



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ディーテのお家で夕食を食べて、デスに送って貰ったのが、一昨日の話。
昨日は、いきなり、休めと言われたので、部屋で沙織様の仕事をしていた。
…勿論、シュラの作ってくれた夕飯はとってもおいしかったです。
いつもの通り、目を覚まして、お弁当を作る。
立ち上がって、成人のお祝いに母から貰ったコロンを一吹き、パソ子さんを持って、執務室に向かおうとする。
扉を開けた瞬間に目の前にいたのは、ミロさん。
思わずびっくりして、肩が跳ねたが、彼は気がつかないのか、気にしないのか、綺麗に笑った。

「おはよう!」
「…おはようございます、ミロさん。朝から、どうかなされましたか?」
「俺、君と話がしてみたくて」

屈託のない笑顔を見せる彼。
若干の女ったらし臭がしないこともないが、まあ、私とは関係ないだろう。
にこり、笑い返す。

「私も、一度お話ししたかったんです」

じゃあ、行きましょうか、と執務室に向かえば、肩を掴まれて止められる。
振り返ると不満そうな、可愛らしい顔をしたミロさん。
ぷくり、と膨らんだ頬を思わず、人差し指で突いてみる。
ミロさんが驚いたように後ずさった。

「私は仕事があるので、お昼にまたお会いしましょう」

そう言い残して、執務室に向かう。
いつも通り、執務室に入ると、今日は座る場所があるようだ。
うん、安心。
ディーテがひらひらと手を振り、自分の隣の席を差す。

「おはようございます、ディーテ」
「おはよう、氷雨。今日は遅かったね?」
「ミロさんと、少しお話ししてたので」

小さく笑って、机にパソコンと必要な書類を置く。
それから、サガさんに自分の仕事を貰いにいって、机に帰った。
ら、ディーテの反対隣には、デスが座っている。
彼はこちらを向いてにやり、と笑った。

「よお、氷雨」
「…おはようございます」
「んだよ、その心底驚きましたって顔は」
「いえ、デスも真面目に仕事をされるのだと、初めて知ったので」

そう言えば、どこか気恥ずかしそうに、目を逸らして、別にいいだろ、と告げる彼。
思わず笑いそうになるのを耐えて、彼の目の前にある大量の書類を一瞥する。
まあ、本気でやれば終わる量なのだろうな、と肩をすくめて、自分の仕事を見た。
…問題なく、終われるか。
静かに目を伏せ、ふう、と息を吐いて、精神統一。
それから、ゆっくり目を開いて、書類を見た。
ポールペンを一度弾いて、くるりと、回す。
斜め読みした書類の単語を直しながら、ルーズリーフに文字を綴っていく。
ギリシャ語なら、問題なくなってきた気がする。
日本語とまではいかないが、英語くらいの早さでは読めるし、書けるようになってきた。
徐々に、音が遠くなっていく。
その瞬間だった。

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