正義 | ナノ



083
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煮え切らないような私の答えにデスは不思議そうに首を傾げた。
んー、と首を傾げ返しながら、空に視線を向ける。
たくさんの星がいつもより近く見えて、何とも言えない気持ちになった。

「でも、そうなったには、絶対何か理由があるはずじゃないですか」
「無差別殺人とかでもか?」
「犯人を肯定することはできませんが、犯人の理由を知ってこれからが起きないようにはできます」

理由を知ることは重要だ。
まるで何もなく起こることなんて、ほとんどない。
何かが視界に入ったから、何かが琴線に触れたから、行動を起こすのだろう。
なんて、被害にあったことのない人間の考えなのだろうけれど。
不条理に知り合いの命を奪われたら、きっとこれほどまで冷静でいることはできないのだろう。
それが、もしかしたら、此処の聖域の中の問題なのかもしれない。
私は外から見ていただけだから、何とも言えないけれど。
でも、理由を知ることで、少しでも、相手の考えに共感が持てたなら、きっと、良くなる。

「サガさんが戦いを起こした理由、彼自身は言わないかもしれないけど、知ってる人はいるでしょう?」
「誰だよ?」
「彼自身にも扱えない、彼」
「お前、」

なんて、できたらいいんですけど。
肩をすくめて笑う。
他のところからじわじわ責めてくしかないと思いますよ、とだけ告げる。
あからさまにほっとした声を上げて、ビビらせんなよ、とデスが苦笑を浮かべた。
彼にあっても、私なら大丈夫だなどと言えないし、殺されないなんてもっと言えない。
私は死にたくないし、自分自身を過信してもいない。

「私ができることなんて、話を聞くくらいですから、デスが頑張って下さい」
「…そうは言われてもなぁ」
「シュラ、ですか?」
「…ああ、アイツの考えが後ろ向き過ぎてどうしようもねぇ…って俺は何言ってんだろうな」
「いいじゃないですか、そんなに考えてくれる友人がいることは救いですよ」

ふふ、と軽く笑ってみせて、そうだ、と提案する。

「思い出の場所とかって、ないんですか?」
「は?」
「ほら、シュラとデスとディーテの」
「ああ…なくはねぇけど」
「そこで、三人で昔に戻って話してきたらどうですか?大人になると言えないことが多過ぎますから」

全部話し合って、喧嘩して、すっきりしたらいいですよ。
そこまで言ってから、足を進める。

「さ、早く帰りましょう?」
「…そうだな」

そのまま繋がれた手を引っ張られ、抱き上げられたのは、予想外だった。
…とだけ、言っておこうかな。


*夢主はこんな考えですよーってだけです。

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