正義 | ナノ



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「ねえ!」
「っ、…」

いきなりかけられた声に、思わず眉を寄せながら顔をあげる。
ミロさんだ。

「…なんでしょうか?」
「俺はミロ、君は?」
「…、私は白雲です」

にこり、笑って、言い切る。
御用はそれだけでしょうか?と穏やか微笑んだ。
隣のデスが気がついたように声を上げる。

「おい、氷雨」
「何でしょうか?」
「悪いな」

デスの手の中には、期限が一昨日までの、沙織様へ提出する書類。
=私が処理するだろう、それ。
今デスの手元にある…ということは、勿論、終わっていない。

「今すぐやって下さい、そのあとすぐ私が確認するので」
「おー、頼む」
「それから、他にも同じような書類があるのなら、即刻お願い致します」
「…わーってるよ、」
「ええ、デスならやってくれると信じていますから」

会話を終わらせ、ふぅ、とため息を吐く。
それから、自分の書類に目を向けようとして、気がついて目をあげた。
むす、っとしたような表情に思わず吐きそうになった溜息を飲み込む。
できる限り、穏やかな声色で、静かに声をかけた。

「申し訳ありませんでした、ミロさん。…それで、お話は?」

不快そうな顔をしたまま、彼は動かない。
漂ってくる空気で、ああ、やってしまった気がする、と遠い目をしたくなる。
正確に言えば、それだけでなく、精神的にも蝕まれている気がしないでもない。
昔から人が怒っていたり、不機嫌になっていたり…マイナスの感情を露にしているのは嫌いだ。
というか、苦手、といった方がいいだろうか。
その感情に引っ張られて、自分の心が不安定になるのを感じる。

「…」
「……」
「………」
「…………」
「ミロ、」

無言で見つめ合っていると、カミュさんの声が聞こえた。
その声に反応して、彼が後ろを向く。
こっちに来い、と手招きをしているカミュさんにミロさんは近づいていった。
私は静かに、書類に目を向ける。
ミロさんがカミュさんの隣に座って話し始めたのを視界に入れて、書類に集中した。

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