正義 | ナノ



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「星矢君たちにあったとき、登場人物としてしか見られない自分に辟易しました。でも、彼らは優しかった」

ふふ、とその時のことを思い出して言う。

「私が、記憶について言っても、笑って気にしないと言ってくれた。慕ってくれた」

彼らは優しい、そして、いい子たちだ…私ごときを慕ってくれた。
だからこそ、私は彼らから離れられないのだろう。
ふ、と笑んで言葉を続ける。

「…だけど、聖域は違う」

数人が息を飲んだのがわかった。

「だから、来たくなかった、本当は。でも、それでも…嘘でも、笑いかけてくれることが嬉しかったんです」
「氷雨…、」
「私は生きているべきではないのかもしれません。…でも、兄も両親も、星矢君たちも、沙織ちゃんも、私が死ねば、きっと悲しむ」


サガさんも、きっとそうなんです。自分では死ぬべきだと思っても、周りは死んで欲しくない。だから、命を絶ってはいけない。
彼女は哀しげに笑い、首を振った。
目を伏せて、一度深呼吸。
彼女はもう一度サガの頭を撫でて、立ち上がった。

「氷雨…?」
「大丈夫ですよ、サガさん、貴方は皆から愛されてるんですから」

“わたし”と違って、小さな声は近くにいた俺を含め数人にしか聞こえなかったようだ。
だが、彼女は気にすること無く、ドアへ向かう。
自然とあけられる道に、寂しそうに笑いながら、彼女はドアを開けた。
出る前に振り返り、泣きそうな笑顔で言う。

「明日からの仕事は、私の部屋の前にでも置いておいてください」

では、失礼します。
バタン、と閉じられた扉に俺たちは動けなかった。

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