正義 | ナノ



039
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「でも、サガさんとカノンさんによろしく、って言ってもらえて、カミュさんが机を開けてくれて、ディーテさんが笑ってくれて、」
「、」
「すごく嬉しかったんですよ?頑張ろうって思えたんです。サガさんの仕事量見て、手伝いたいとも思いました」
「しかし、それは、罪ではない、」
「…いいえ。私は本来居てはいけないんです、サガさんなんて比べ物にならないくらいに」
「そんなはずは、」
「こんなことを言ったら殺されるか、病院送りなんですけど…私、前世の記憶があるんです」

ぽかん。
周りが唖然としたのがよくわかった。
しかし、何故殺されるのか、と思ったのだろう、サガさんがどうして?と呟く。
その言葉に、当たり前の疑問だなと、笑った。
前世の記憶があるだけでは、最悪病院送りにはなるだろうが、命まで奪われることはない。
ただし、それは、この世界での記憶であったらの話であって。
彼らの過去を知っているなんて言ったら、きっと、気持ち悪がられるだろう。
機密を知っているだろうから、命も危ないだろう。
私はそう考えている。
なのに、言おうと思ったのはきっと、殺されることも諦めていたのかもしれないし、彼が、“わたし”の好きなキャラであったこともあると思う。
切ない生き方の彼に、心から笑って欲しかったと思うからかもしれない。
だから私は、言い切ったのだ。

「私、聖戦についても、サガさんが言う、貴方の罪についても、全部、知ってるんですよ」

どういうことだ、と空気がざわついた。
サガさんが信じられないというような目をして、私を見る。
仕方、ない…よね。

「前世の“わたし”は、今よりもっと平凡な女でした。しかし、その世界には、聖闘士星矢という本がありました」
「星、矢…?」
「ええ、そこには、貴方が犯した罪も、その後起こった聖戦についても、描かれていました」
「どういう、ことだ?」
「パラレルワールドではないかと考えていますが、冥界との聖戦まで描かれていた本を、私はよく読んでいたんです」

思わず、自嘲する。
なんで、こんな記憶が残っているのか。
気持ち悪くて仕方ない。
周りを見ると気の抜けたような表情が並んでいる。
はは、と空笑いしてから、サガさんを立ち直らせようとした自分が落ち込んだことに気がついた。
もういい、此処まで言ってしまったんだ、全部言ってすっきりさせてもらおう。

「気持ち悪いんですよ、自分が。自分であるはずなのに、自分ではない記憶があって。でも、それは自分で」
「氷雨?!」

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