正義 | ナノ



038
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彼は、体を起こし、正座のような形に座る。
私の顔を見てから、口に出しずらそうに、目をそらした。
これは、エロい小道具の所為じゃないなー…この暗さは、違うだろ。
心なしか、周りの空気も固くなってる感じだし。
サガさんが軽く下唇を噛むようにして、眉を寄せる。
まったく、子供じゃないんだから…なんて思って、青銅の彼らに関わるときのような行動に出てしまった。
…今考えれば、バカとしか思えない。
右手を彼の頬に添えて、親指で唇の当たりを押す。
安心させるように、目を見て笑いかけた。

「噛まないで、…ゆっくり、思いついた言葉でいいから、教えて?」
「私、は…罪を、赦されない…大きすぎて、だから、私は」

頬から手を離し、体を少しずらして、背中を一定のリズムで叩く。
それから、そう、それで?と先を促す言葉を続けた。

「手に、かけた。仲間の、…命を、なのに…彼らは…何故だ?」

完璧な問いかけだった。
私が黙っていたら、これ以上口を開くことは無いだろう。
叩く手はそのままに私は、ゆっくり言葉を紡いだ。

「これはあくまで私の考えですが、貴方が、それほどに後悔しているからでは?」
「私が?」
「ええ、それほどに貴方が自分を責めていては、貴方以外の人はあなたを責めることなんて出来ません」
「どうして?」
「責めたら貴方はそれを理由に、命すら断ってしまいそうですから」

それほどに危うい状態だと、皆知っているのですよ。
そう、真剣に言う。
手も止め、彼の背に添えておくことで、伝わるはず。
サガさんは苦しそうに首を振る。

「私は、生きていては…いけないのだ」
「サガさん、貴方が生きていていいのか決めるのは、貴方だけでも、周囲だけでもありません」
「?」
「自分を赦せなくても、貴方が生きていてくれなくては困る人間もいます」
「そんな人間、いる訳が、」
「います。さおちゃんはサガさんが聖域の書類をちゃんと終わらせてくれなくては困りますし、私も、困ります」
「それは、私でなくとも、」
「それに、これからよろしくって言ってくれたじゃないですか」

捨てられた子犬のような、売られて行く子牛のような目をした青年。
そんな彼に思わず頭を撫でる。
自分の罪を告げてくれた彼にほだされたのか、私も口が滑った。

「私は、余所者です。貴方たちに受け入れられる訳が無い、そう、思っていました。勿論今も思っていますけど」
「氷雨?」

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