正義 | ナノ



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「聞きたいこととはなんでしょうか?」

自然に首を傾げながら、紅茶を口に含む。
暫くどうでもいい会話をしてから、意を決したような二人の最年長組を交互に見た。

「ここに、残る気はないのか?」
「…は?」

言われた内容が理解できずに問いかけてきた本人、つまりシオンさまをしみじみと見つめた。
ここに残る?
つまり聖域に?
それ以外のここ、とは何か。
ギリシャ?断る。
日本の方が楽に生活できるのだから、そちらで生きて行けるならそっちを選ぶ。
聖闘士の中?
それこそ冗談じゃない。
命がいくつあっても足りないだろう。
と、なると、やはりこの聖域で、今のまま生活しないかってことだよね?

「ありません」
「決意は固いようじゃの」
「そうですね。ここは明らかに私の居場所ではありませんから」

どんなに黄金聖闘士がよくしてくれていても。
仲のいい友人がいたとしても、親しくしていたとしても。
ここで生きていくことは、私の異質と常に向き合う必要があるということだ。
確かに、軽い二重人格状態であることを受け入れてはいるし、共存はしている。
けれど、常にその存在を感じ続けて、隣人としていられるかと言われたら、そうではないのだ。
無表情に首を左右に振って、意思表示をする。

「そうか」

納得いっていないような返事だが、それでも、シオンさまには諦めてもらわねばなるまい。

「それに、もともと3ヶ月以上は良くないでしょうし」

苦笑する。

「聖闘士とは、アテナの私兵。他のことに意識を割くべきではありません」
「…本当にそう思っているのか?」
「さあ?どうでしょうか」

恋愛感情など、抱くべきではない。
私が、なのか、それともあちらが、なのかは言わずともわかるだろう。
別に自分が綺麗だとか、魅力的だとかは思わない。
だが、一般人女性を知らない彼らがころっと騙されるのには十分だろう。
全てを封じ込められれば私はその思いすら残さないのだろうから、なんの問題もないのだから、一時的にと求めることは簡単だ。
とはいえ、そういった風に見える相手もいなければ、そういう関係になりたい相手も、今の所は全くいないのだけれど。
そう思いながら、紅茶を飲みきって、どうでもいい世間話に興じた。

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