正義 | ナノ



256
しおりを挟む


サガさんとカノンさんは満足してくれたらしく、翌日すごく感謝された。
少しほっぺを赤くしながらテンションの高かったサガさんはすごく可愛らしかったです。
三十路とは思えなかった、と何度も言っているけれどもう一度心の底から言いたくなった。
カノンさんもへにゃっと笑って美味しかった、と笑っていて変な声が出そうだった。
なんだろうね、聖域って三十路の純粋培養でもしてるの?
過去から考えると全く純粋じゃない気がするけど…いや、むしろ純粋なのか?
ドツボにはまりそうな思考をそこで区切って、仕事を始める。
色々詰まっていた仕事やらなんやらが落ち着いたので、ちょっとゆっくりできる気がする。
まあ、日本からの仕事は相変わらず大量にくるので、関係のない人間関係的な色々が落ち着いたというだけだけれど。
ディーテとシュラ、デスの3人も私を甘やかすことは変わらない。
それでも、なんとなく甘やかし方に違和感を覚えることもある。
私もここに慣れてきた、ということかもしれないけれど。

「そうだ、サガさん、私3週後に一時的に日本に帰りますが」
「えっ…ああ、そういえばそうだったな」
「ええ、星矢くんたちの将来に関わることでもあるので…すみません。それでご相談なんですが、」

言いながらサガさんに近づいて仕事の割り振りだったりを調整する。
私が抱えている仕事で3週間後も継続していかなくてはならないものは流石に別の人にお願いしたい。
まあ元々私が聖域から離れる頃には全部他の人たちに任せる仕事なのだから、それが早まるだけだ。
…できることならカミュあたりにお願いしたいなぁ。
自分の手持ちの仕事をがっつり減らして、帰ってきてからも一ヶ月くらいしかないのだし、そんなに引き受けなくていいよね?
私がいないのに、私が方法にテコ入れしてしまうとそれはそれで非常に面倒だ。
よし、と決めて、いろいろお願いしてさらっとスルーして行こう。
ちょっと泣きそうな顔のサガさんがいるのは気のせいだ。
うん、絶対気のせい。
気を取り直して自分の仕事を始める。
言いたげな視線なんて感じないし、なんなら気の弱い感じに私を呼ぶような声が聞こえたような気もした。
うん、気がしただけだから関係ないよね。
ここは譲ったら、単純に私のためにも聖域のためにもならないから。
私がここに残ったりするのであれば、また違うのだろうけれど、約束では三ヶ月間だけここで働くのだ。
とはいえ、三ヶ月が終わったら、記憶を消して日本に戻るのだろうと思うけど。
矛盾しているようだけれど、それが事実だ。
無駄な邪念を振り払って、仕事に集中した。


「氷雨、少し時間はあるか?」
「…ええ、構いませんよ」

シオンさまに声をかけられたので、少しだけ考えてから頷いた。
では、と誘われて教皇宮の生活区域に向かう。
そこには童虎さまもいて、にこりと楽しそうに笑って、手を振っている。

「さて、今日はお主に聞きたいことがあっての」

目を細めて問いかけてくる彼に嫌な予感が過ぎる…今からでも帰れないだろうか。
無理か、帰れないよねー、知ってる。
案内されるまま、テーブルにつき、シオンさまの指示でメイドさんが紅茶を茶菓子を差し出してくれる。
ありがとうございます、と頭を下げる。
メイドさんが一瞬驚いた顔をしてから、すぐに綺麗な一礼をして部屋から出て行った。
ふと思ったけど、この状況も本来ならおかしいんだよね。
個室に男二人に女一人って本来なら褒められる状況じゃないんだよ。
まあ、私自身がそんな気にしてないからいいんだけどさ。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][ back to main ]
[ 番外編に戻る ][ 携帯用一覧へ ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -