正義 | ナノ



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嬉しそうな顔をするサガさんに、お弁当箱の入った方の袋を差し出した。
それから、サガさんの服を着たカノンさんに近づいて、どことなく期待した顔をしているのを見て、はい、と袋を差し出す。
それを覗き込んで、虚をつかれた顔をしたカノンさんににっこりと笑う。

「サガさんにはお弁当を頼まれたので、カノンさんにはおつまみにしてみました」
「…そうか、ありがとう」

なかなかに残念そうに見えたが、おつまみとお弁当の差は一体なんなのかと小一時間。
私の気持ちに気がついたのか、カノンさんが取り繕ったように、嬉しいからな、と力強く宣言していた。
なんだか私が言わせたみたいじゃないか。
別に喜ばなきゃいけないものでもないだろうし、と苦笑して、首を左右に振った。

「本当は、先に聞ければ良かったんですけどね」

すみません、と謝って見せれば、カノンさんは気にしないでくれ、と私をまっすぐみた。

「本来なら祝われて嬉しい年齢でもなくなってきているからな」
「…そうですか?」
「そうだろう?」
「さあ?私はどちらかというと年上には憧れがあるので、年を重ねることは嫌いじゃないですよ」

肩をすくめて答えると、カノンさんはまじまじと私をみてから、くつりと笑った。
どことなく嬉しそうな声で、そうか、と呟くようにいうのを聞く。
まあ、喜んでくれたのならいいだろう、と踵を返した瞬間に思い出した。

「…サガさん、カノンさん、甘いものって、食べられます?」
「え…ああ、大丈夫だが」
「ケーキでもくれるのか?」

サガさんの言葉に良かった、と思って、カノンさんの言葉に頷いた。
少しだけお酒多めに作ったから、双子が食べられなかった場合、デスとディーテに消費してもらうことになりかねなかった。
ちなみに、シュラはお酒はあまり飲まないらしく、一緒に甘いものを食べてくれる。
なら、後でお持ちしますね、と笑って執務室から退出する前に、あ、とサガさんに告げた。

「お弁当箱も、プレゼントですからね」

もう頼まれることはないだろうけれど、いつか恋人ができたら作ってもらえばいいだろう。
今いないのをどうして知っているかって?
あのワーカーホリックがデートする時間がどこにあるのか、私の方が聞きたいくらいだ。
恋愛対象として考えたらありえないと思うよ。
携帯も持ってないし、聖域内でしか恋愛できないだろうし、聖域から出るのとか、任務くらいだし。
もしサガさんに彼女がいたら私本気で謝るわ。
関係ないことを考えながら、今度こそ執務室から出て、部屋に戻った。

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