正義 | ナノ



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驚いたと言いたげな顔に、その目を見られないまま頷いた。
流石に、時には両隣で、前後で、と私が範囲に入っている時にそんなことになれば自覚する。
だが、私のせいなのか、なんて聞き方は自意識過剰みたいだし、なんだか聞きにくい。
もっと別の聞き方はないだろうか。
緊張で働かない頭を必死に働かせる。
私がいないところではいつも通りなのだろうか、それなら下手に広げない方がきっといい…そうは思うのだけれど。
想像以上に、私が2人を、ディーテを含めた3人を好ましく思っているらしい。

「大丈夫だよ、氷雨…君が心配することじゃない」
「本当?」
「ああ、過去に縛られていた私たちが、別のことへ目を向けられるようになったからこその空気だから」

でも、女性を怯えさせてしまうのは、いけないことだね。
そう行って甘やかな笑みを浮かべて、私の頭を撫でる。
いつもと違う雰囲気のディーテに頭が真っ白になりそうだ。
そのまま手のひらを滑らせて、私のほっぺに当てる。
軽くそのまま彼の方へ引き寄せられて、コツン、とオデコ同士をぶつけられた。
大丈夫、包み込むように暖かな声でもう一度私に告げるディーテに泣きそうになる。
私が泣いたところでどうにもならないのはわかっているし、私が全ての原因だというほどに自惚れているつもりもない。
だけれど、私に関係のあるタイミングで、友人に近い関係を築けた人たちがギクシャクするのは見たいものではなくて。

「大丈夫なら…いいの」
「うん。氷雨が不安に思うことなんてなんにもないよ、私がいるだろう?」
「…ふふ、そうだね」

自信満々に笑うディーテがなんだかおかしくてつい、つられるように笑ってしまう。
彼の言葉は自信に満ち溢れていて、まるで魔法のように私の心を安心させる。
くるり、と一度ティーカップの中でスプーンを回したディーテは太陽の光を浴びて、キラキラしていた。
カラカラの喉を潤すように残っていたお茶を流し込んだ。
私の様子にもう大丈夫だと判断したのか、ディーテもゆっくりとお茶を飲み干して、行こうか、と穏やかな顔で笑った。
差し出された手を素直に握って、いつも通りあっという間に聖域に戻った。
じゃあ、デスマスクが迎えに来るまで待ってるんだよ。
ディーテは私を部屋まで送っていたずらっぽくそう言った。
元気に返事をしてから、明日のプレゼントのための下準備で部屋に篭る。
いつも通りの時間から少しだけ遅れて迎えに来てくれたデスはどことなく気まずそうな顔をしていた。

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