正義 | ナノ



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「その代わりといってはなんですが、これ、ミロさんに届けてください。すぐに、カミュの分も作りますから」
「…ああ!」

嬉しそうに大きく頷いた彼はお弁当箱を受け取って、じゃあ行ってくる、と目を細めた。
少しだけドキドキした心臓を抑えながら、部屋の中に戻る。
イケメンってほんと恐ろしい。
朝ごはんにしようと思っていたおかずを別のお弁当箱を洗ってから詰めていく。
が、余り物では若干足りなそうだったので、また少し、追加でおかずを作る。
通常通りのお弁当を作っていたら、もう一度ノックが響いた。

「はーい」

扉を開けると、申し訳なさそうなカミュと不機嫌そうなミロさんがそこにいた。
…うん?

「氷雨ちゃん!カミュにもお弁当作るって本当?」
「え、うん」

ミロさんの手にはお弁当箱があり、私の手の中にもお弁当箱が一つ。
とりあえず、違いを見せれば満足するだろうか、と開いたままのカミュ用のお弁当箱を差し出した。

「これがカミュ用で、ミロさん用のは、」

言いながら、そのお弁当箱の包みを解く。
蓋を開ければ、大輪のひまわり。
ミロさんの顔が不機嫌そうなものから一転。
効果音的にはぱあああっとだろう、満面の笑みを浮かべた。
やはり太陽かひまわりのようだ、と思う。

「じゃあ、いいや!俺、行ってくる」
「待って、っと、はい。行ってらっしゃい」

お弁当箱を包み直して、ミロさんに渡す。
嬉しそうに受け取ったその顔を見送って、手を軽く振った。
唖然として立ち尽くしているカミュを見上げて、視線を合わせる。
彼は、ハッとしたように私の手元を見た。
弁当を求められてるんだろうな、と思うのだが、残念ながらまだ完成していない。

「もう少し待っててくださいね」
「まだなのか」
「もう一品追加しようと思ってたんですけど、このままでいいですか?」
「…待つ」

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