正義 | ナノ



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悩んだように告げたカミュは視線を彷徨わせる。
…ああ、そうか、部屋に入れるのはダメなんだよね、どこで待っててもらおうか。
近場、執務室?
私の考えがわかったのだろうか、カミュが笑う。

「執務室で待ってる」
「お願いします」

ちょっと未来で待ってる的な何かを感じたけど気にせず、答える。
とりあえず、もう一品作って、間に詰めればすぐに出来上がるのだが…これだけではつまらないよね?
と、いうわけでちょっと特別にデザートを作ろうかな。
あとでミロさんにも運んでもらおう…と思えば、あまり足の速いものでは困る。
…おとなしくうささん林檎にしておこう。
可愛らしく林檎を切って、小さなタッパーを二つ用意してそれぞれに入れる。
これでいいだろう、とお弁当箱と小さなタッパーひとつを一緒に包む。
それから、別に小さなタッパーを適当な小さい紙袋に入れて、執務室へ向かった。

「カミュ?」
「氷雨!」
「これ、どうぞ。それで、ミロさんにもこれ渡してもらえますか?」

せっかくなのでデザートがわりに。
押し付けるように渡せば、カミュはちゃんと届けよう、と頷いてくれた。
…そんなに真剣な顔しなくてもいいのだけれど。
慌てたように執務室から出て行くカミュを視線だけで見送って、こちらへ視線を向けてくるサガさんに苦笑を返した。

「あ、失礼いたしました」
「待ってくれ、」
「…はい?」

出て行こうとしたのだが、声をかけられて呼び止められる。
振り返って、その姿を見ると何か言いたげな、それでいて、どこまでもまっすぐな。
素直じゃない子供が、何かを言いたくて、でも言えない顔というものではないだろうか。
星の子で何度か見たことのある表情だから多分、そうだと思う。

「…何か、聞きたいことがありますか?」
「カミュに渡していたのは、その…」

口ごもるその姿に、一つの考えが去来する。
え、つまり、これお弁当ブーム?
お弁当って文化あんまりないんだっけ?あんまり記憶にないんだけど。
バケットとかサンドウィッチとかであれば、確かにお弁当としての形はないのかもしれない。
っていうか、そうか文化があろうとなかろうと、聖域内でそんなことするのほとんどいないよね。

「前にミロさんと約束したお弁当です。ミロさんに届けてもらう代わりにカミュさんにも簡単に作って欲しいと依頼されまして」
「…そうか」

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