正義 | ナノ



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「ああ。好きだよ?」
「…どれほどだ?」
「そうだなぁ…君はどれくらい好きになってほしいんだい?」

じっと見つめて問いかける。
その質問は予想していなかったのか、彼は目をぱちり、と瞬いた。
“サガさん”のように眉間に皺を寄せた難しい表情をして、まっすぐに私を見つめる。
頬に当てられていた手も背中に回って、ぐいと引き寄せられる。

「…アイオロスよりももっと、大きく…一人分では足りないから」

囁くように言われた言葉。
戯れのようにも聞こえた。
だが、聞いた瞬間にぞわり、と背筋が冷えるような感覚が起こる。
本能的に、これが本質なのだ、と確信した。
ああ、これは少し…他の人たちに聞かなくてはならないだろう。

「前者はすでに満たしているよ…後者はまだだけれど」
「…どうすれば、私を好きになる?」
「それは、サガさんが考えることです。ただ…」
「ただ?」

私の言葉をおうむ返しにして、首を傾げたサガさんに笑う。

「今までとは違う方法を取ってみるのも、一つの道ですよ?」
「…私は…俺、は…」
「大丈夫です、私はサガさんの味方ですから」

恋人同士の囁きのように、耳元で優しく告げる。
下手に関わり過ぎると、今度は私がサガさんを支配するようになってしまうから、気をつけなくてはいけないんだけど…。
私の立ち位置は毒になってはならない。
側にいすぎるのも問題だが、その点は3ヶ月後…今からだと大体2ヶ月後か、の日本へ帰る段階でどうにかすればいい。
記憶を消すのであれば、サガさんにお願いするだけで、きっと彼自身断ち切ってくれることだろう。
彼だって、いい大人なのだ。
それに、私の時とは違ってプラトニックだから、そこも守りきらなくてはならないなぁと思いながら、ぽんぽん、とその頭を叩くように撫でて椅子から降りる。

「ほら、休憩は終わりだ。残りも君なら余裕だろう?」

ちゅ、と額に口付けて、その場を離れようとした。
ら、突然立ち上がった彼が私の手を引いて、頬に口付けてくる。
驚いてぱちり、瞬いてその顔を見る。
目元を色っぽく染めた彼は、何か文句があるのか、と言いたげにこちらを睨んでいる。
…どこかで見たことがある、と思ったら、昔の一輝君の照れ隠しだ。
それにしても、誘いはかけてくるのにほっぺにチューは照れるとは、いったいどういう基準なのか。
考えながらも顔はにっこり笑って、頑張ってね?と告げる。

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