正義 | ナノ



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「見守っていてくれても構わないが?」
「側にいてほしいならそう言えばいい」
「…………側に」
「仕方ないなぁ、素直に言えたご褒美だよ」

答えれば、どことなく嬉しそうな反応を見せている、気がする。
気のせいかもしれないけど…。
まあいいか、と椅子を持ってきてサガさんの隣に座る。
ぼうっとしているのもなんなので、仕舞ってあった文庫本を読み始めた。

あまり厚い本ではなかったからか、読み終わった頃にはちょうどいい時間だった。
隣の彼は書類に向かっていて、私は静かに席を立ち、仮眠室へ向かう。
紅茶を淹れて、執務室に戻る。
書類でいっぱいなその机に、そっとカップを置いた。
小さなかちゃり、という音に気がついたのか、彼がこちらを向く。

「そろそろ切りをつけてもいいと思いますよ?」
「…だが、終わっていない」

その言葉に本質は変わらないのか、と小さく笑う。
とりあえず、紅茶を渡して飲ませている間に、書類の方をパラパラと見る。
残っている大半は日本の…グラード財団関係で、私が目を通さなくては最終段階へ進まないものだ。
その大半を適当に横に避けておいて、残った数枚を渡す。

「こっちだけで大丈夫です。残りは私が目を通さなくては進みませんから、今急ぐ必要はありません」

書類を受け取った彼は、わかった、と静かに頷く。
素直にその書類に向き直った様子を見てから、他の執務室にいる黄金聖闘士たちにも紅茶を淹れる。
いらなかったらそのままにしておいてくれるだろう、多分。

「氷雨、今日は私たちと食事してくれるだろう?」
「そのつもりですけど…?」
「それならいいんだ」

ディーテのところに紅茶を置いたらそう問いかけられた。
私の答えにどこかホッとしたようなディーテは私をじっと見つめる。
どうかしたのだろうか、と見返せば、彼は苦笑して首を左右に振った。

「なんでもないよ。さ、サガが呼んでいるみたいだから行っておいで」
「…あ、あとで聞きたいことがあるので夕食の後時間ありますか?」
「わかった、二人にも伝えておくね」
「ありがとうございます」

ディーテさんの優しさに甘えて、へらり、と笑う。
それから彼のほうへ向かって、柔らかな髪を何度か撫でる。
小さく目元を和らげた彼に、サガさんは本当に三十路過ぎなのか、と考え込みそうになったのは秘密だ。

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