正義 | ナノ



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「アルデバランさんは手が大きくて、色々なものが持てそうですね」

笑いながら、ゆっくり立ち上がる。
軽々と抱き上げてくれるアルデバランさんマジイケメン。
こう、走りよって飛びつきたい衝動にかられる。

「ああ…氷雨くらいなら簡単に持ち上げられるぞ!」

明るく笑い飛ばしてくれるその言葉に、嬉しくなる。
彼の言うその言葉はきっと体重的な問題で、同時に聖闘士の筋力的な問題だろう。
それでも、“彼”と会って、若干思い出していた私にとってはひどく嬉しい言葉だった。
そういうつもりがなくても、嬉しいものは嬉しい。

「ありがとうございます」
「それは俺のセリフだと思うが…」

不思議そうな顔に思わず笑いが溢れる。

「考えがまとまるまでは、今まで通り、いつも通りでお願いしますね」
「…それでいいのか?」
「はい」

頷いて見せれば、ぱちり、と大きく瞬く。
ニコニコ笑ったまま、その顔をじっと見つめる。
私の顔をじっと見つめて、それから、そうか、と口元を緩めた。
が、何故か次の瞬間、私から目をそらして、私を持ち上げているのと逆の手で口元を抑える。
耳が赤くなっているのを見ると、照れているらしいのだが、全く理由がわからない。
この展開でなぜ照れた?!

「その…今朝は、すまなかった」
「えっ」
「女性の部屋に、入り込んで、服を…」
「ああ、大丈夫ですよ、緊急事態というやつです」

なるほど、思い出したからか。
その反応がやはり可愛らしく見えてしまうのは、大きな体に見合わない行動だからだろうか。
それとも、今までこんな対応を見せてくれる人に会った事がなかったからか。
私は気にしていないと首を振ったが、それでもどこか申し訳なさそうで。
視線だけこちらに向けて、相変わらず顔をそらしているアルデバランさんに告げる。

「それに、あるればらん…さんは私が起き上がったとき目線そらしてくれてたじゃないですか」

名前を甘噛みしたことを誤魔化すように一息で言い切った。
が、きょとんとした顔は、多分、どちらかというと、名前を噛んでしまった方に対する反応だろう。
くつくつ、と喉を鳴らすような笑い声に、今度は私が視線をそらす。

「アルでいい。言いにくいだろう?」
「…言いにくくはないですけど、お言葉に甘えてそう呼ばせてもらいます」

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