正義 | ナノ



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1日の休み、とはいえ、サガさんのことである程度潰れてしまったけれど。
することがないし…と、この間紫龍君が持ってきてくれた文庫本を読もうかと取り出した。
どこで読もうかなぁ、と思っていれば、アルデバランさんがすまない、と声をかけてくる。
あらまあ、と心の中で呟いて、文庫を仕舞ってその顔を見上げた。

「少し、話がしたいんだが…いいか?」
「はい…ただ、お天気が良いので、お外に行きたいです」
「ああ」

柔らかく笑ったアルデバランさんは私を軽々と抱き上げて、彼が趣味でやっているという畑の近くに連れてきてくれた。
近くには大きく育った木があり、その木陰には手作りらしいベンチもある。
柔らかそうなブランケットを引いてくれた彼は、その上に私を下ろす。

「お姫様みたいです」
「え?」
「こんなに丁寧にしてもらったことはないから」

言いながら恥ずかしくなって、目をそらす。
いつも…というか、ほかの人が雑なわけじゃない。
リアとかすごい丁寧にしてくれたことは覚えているけど、なんだろう、丁寧の種類が違うというか。
普段は性別的に丁寧にされてるけど、アルデバランさんは小動物とか、小さい子とかを扱うときに近い丁寧さというか。
決して子供扱いされているわけではないし、不快ではないけれど…気恥ずかしいむず痒さが。
そこまで考えて、ハッと気がついて、ありがとうございますと顔を上げた。
顔をあげて見えたのは、照れからか、少しだけ頬を赤く染めている横顔。
頬を数回掻いて、地面に座った彼は、それでも私より少し視線が低いくらいで。
本当に身長が高いんだな、としみじみと思う。

「お話は…多分、サガさんのことですか?」

問えば、一つ頷く。
やはり“彼”の存在は、なかなか根が深いらしい。
しかし、そこまで言ってアルデバランさんは、特に何を言うわけでもなく、口を噤んでいる。
何も言えない様子からすると、嫌悪や好意ではなさそうだ。

「ゆっくりで、大丈夫ですから」
「…サガは、どうして俺たちには何も言わないんだ?」
「何も…?」
「今回、誰のところに行くより先に、氷雨の元へ行ったのは、俺たちじゃダメだったからだろう?」

どこか辛そうに告げる彼は、大きな体を小さくする。
迷っているのだろうか。
真っ直ぐにその顔を見つめながら、先を促す。
一度深呼吸してから、アルデバランさんは続ける。

「確かに俺は、以前サガの異変に気がつけなかった。だから、頼られないのも仕方ないかもしれない」

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