正義 | ナノ



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だから、そのままベッドに入れたし、甘やかしたのだ。
似ている“わたし”が対応して、私は受け入れるのだと伝えた。
“私”さえも彼を拒否することはないと、そう教えたところなのだから。
苦笑する私に、彼らは目を見開く。
私が転生であることは彼らも知っているから、だろう。

「だが、危険だ」
「そうですね」
「知っているなら何故!」
「…自分に見えて、仕方ないんです。全部がわかるはずもないですけど、自分を全く受け入れられない状態が苦しいのは経験済みですから」

多分、あの感覚は言葉を尽くしても伝えることができない。
私の語彙力が少ないだけかもしれないけれど、とにかく、彼を受け入れなくてはならないと思う。
助けたいなんて大それた発言はできないし、上から目線で言えることではない。
私だって、いまだに完全に一つではないのだ。
“わたし”として対応出来る時点で、それは自覚している。
でも、完全に二つに別れることはないし、ましてやそれが衝突することも、もうない。
二つがまだ共有されている部分を持っている今なら…と思うのも事実。
彼らの反応から見て、ずっと出てきていなかったらしい彼は、今まで押さえ込まれていたのだろう。
そのまま、吸収できてしまうのならいいけれど、きっと、馴染むことはない。

「今が、一番いいタイミングだったんです、きっと」

へらり、笑う。

「“サガさん”が彼を抑え続けるために倒れられでもしたら、仕事が一気に滞ってしまいますし」

それは私の本意ではありませんから。
告げれば、諦めたようにディーテがため息をついた。

「…仕方ない、でも、もうベッドに入れるのはダメだよ?いいね?」
「ありがと、ディーテ」
「初めてのわがままはもう少し可愛いものが良かったけどね」

ウインクしてみせる彼は、私の頭を撫でて、肩をすくめた。
そんな彼を咎めるような視線を向けたのは、カノンさんとアイオロスさん。
シオンさまはゆったりと笑って、私を真っ直ぐに見つめた。

「何かあったら、必ず相談する約束は、ちゃんと守れるな?」
「はい」
「なら、私たちの家族を助けてやってくれ」

柔らかな光を湛えた瞳にしっかりと頷いてみせる。
不満そうなカノンさんとアイオロスさんにシオンさまは、心配なら監視していればいい、と告げる。
二人は渋々というように頷いてくれる。

教皇室から退出した4人を見送って、残ったシオンは一人、どこか嬉しそうに笑みを深めた。

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