正義 | ナノ



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ナチュラルに隣に立ち、人通りの多い方を歩いてくれる彼はきっと、エスコート自体は完璧にこなせるのだろう。
仕事となれば、割り切って完全に色々こなすんだろうな…。
なんて、ぼんやりと考えながら、横目でリアの横顔を確認しながら、何処に行くんですか?と問いかける。

「何か、食べたいものはあるか?」
「…特にはないですね」

考えてみるが、特に思いつかない。
リアは少しだけ困ったように眉を下げてから、なら、俺の行きつけでいいか?と首を傾げた。
一つ頷いて、外食するのか、とまじまじと見てしまう。
なんというか、あまり聖域からでない印象があったのだが。

「結構外に出るんですか?」
「ん、ああ、最近…兄さんの料理を食べて気を失ってからは、外食が多いな」
「そうなんですか…そうなんですか?!」

へぇ、と頷いたが、頷けない部分があったよ。
何その料理を食べて気を失うって、一体どういうことなの。
衝撃の事実に理解が出来ず、リアを見上げる。
彼は困ったように肩をすくめた。

「アイオロスさんって、そんなに料理が…?」
「ああ。氷雨は勧められたら確実に断わった方がいい…間違えば死んでしまう」

その言い方は何やら劇薬でも入っていそうなんですけど。
なんて思いながらひくりと頬を引きつらせた。
これは、想像していたよりも危険なのかもしれない。
ていうか、人の命を奪える料理って何事なの…本当に劇薬入ってるの?

「兄さんの料理は見た目は普通だから、余計に気をつけてほしい」
「…そうします」

むしろ、私にそれ以外なんと答えろと。
と、どうやらお店に着いたらしく、感じのいいお兄さんが案内してくれる。
リアと四人掛けの席に座って、向い合う。
暫くアイオロスさんの料理について話を聞いていると、カミュとミロさんがやってきた。
どことなく不機嫌そうだが、気にしないでおくことにする。

「置いて行くなんて酷いな」
「お前たちが話し込んでいたせいだろ?」
「氷雨ちゃん、となり座ってもいい?」
「あ、はい、どうぞ」

ミロさんが人なつこい笑みを浮かべて隣に座ってきた。
隣に座った彼は、その直後から真顔でじっと私を見つめてくる。
一体どうしたのかと、首を傾げて見返す。
暫く見つめあう状況になって、どうすればいいのか困り始めたとき、突然にこ、と笑う。
笑い方があざとい。
なんて思いながら、へらり、笑い返す。

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