ひとり | ナノ



06


だいじょうぶ?
幼子のように泣いてしまった俺に首を傾げながら彼女は心配そうにする。
怪我はないという事を伝えても、表情はずっと心配そうなまま。
目線を合わせてくれる氷雨にぎゅ、と抱きついた。
暖かくて、柔らかくて、意図せず震えてしまった声で、大丈夫、と囁く。
彼女は優しく背を撫でてくれて、何かあったら相談に乗るからね、と優しく囁き返した。
その、言葉に俺を気遣う気持ちが感じられて、でも俺はそれだと気づけなくて。
なんだか、もやもやとした気持ちを抱えた。
セフィロスくん、ごはんにしよう?
その言葉を合図に、抱きしめていた手を離す。
代わりに差し出された手を掴み、テーブルに向かった。
そこには、今まで見た事ない料理が並んでいる。
わたしの、こきょうのりょうりなの、まだこういうのしかつくれなくて、
ごめんね、と氷雨は眉を下げて謝った。
美味しそうな香りを吸い込んで、席に着く。
彼女は正面に腰を下ろして、にこり、笑った。
いただきます、
手を合わせて、目を細める彼女。
それは何かと聞けば、食事に感謝する、故郷の風習だと言う。
俺がそれを真似れば、驚いたように、それでもどこか嬉しそうに、
うん、
それから、少しだけ眉を下げて、笑った。
フォークを使って食べていると彼女は棒を二本使って、器用に食べている。
すごい、と思いながら、いつか教えて欲しいと伝えれば、びっくりしてから頷いた。
食べきった後はごちそうさまと言うそうだ。
彼女が、ふと気がついたように声を出した。

あしたからも、ごはんつくってもいいかな?


俺は別に、としか言えなかった。
(本当は嬉しくして仕方なかった)
(彼女はありがとう、と笑って髪を揺らした)

「美味しかった。」


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