ひとり | ナノ



03


俺はいつも通りに刀を振るっていた。
実験。観察。分析。変更。実験。観察。分析。変更。
繰り返しすぎる日常に俺は幼いながら飽き飽きしていた。
面倒くさくなって、何度かモンスターに殺されてみようかと思い、攻撃の手を緩めたこともある。
だが、そう言うときに限って、途中で邪魔が入ったり、モンスターが弱かったりして死ねずじまいだ。
はあ、といつものようにため息をついて、ぼんやりと。
本当にぼんやりと、部屋に1つだけつけられた窓から空を見上げていた。
何もない空だったが、文献を読んだりするよりは楽しい。
今でも、空を見ているのは好きだがな。
そのとき、だった。
宝条が一人新しい世話役を連れてきた。
その女は黒髪でそして、俺と同い年くらいに見えたし、そう思った。
実は俺より6歳年上だったのだが。
まあ、今は同い年だから気にしなくていいだろう。
顔立ちは幼くて、資料で見たことあるウータイ地方の人々に似ていた。
まあ、俺は本物のウータイ人にあったことはないし、彼女が何処出身であるかも気にしなかった。
それよりも今までは紹介なんてなかったのに、と言う考えの方が大きかったように思う。
それもあって、彼女をじっと観察するように見つめた。
少し居心地悪そうに眉を寄せた彼女。
しかし、彼女の視線は俺の目をちゃんと見ていた。
今までの世話係は俺の目を見なかったし、俺を見ることすらしていなかった。
口元が、緩んだ。
自分をまっすぐに見てもらえることを本能的に感じたのだろう。
心の底から嬉しかった。
ただ、その時の俺は嬉しいという感情すらよく理解していなかったのだ。
なんとなく、気分が良くなったように感じはしたけれど。
そんな俺を見てなにを思ったか知らないが、宝条は不満そうに眉を寄せた。
そしてそのまま俺の部屋を出て行く。

そこで彼女は初めまして、と予想外に凛とした声を発したのだった。


ある日、世話役が変わった。
(彼女はにこり、と綺麗に笑う人で。)
(今考えれば、そのとき既に恋に落ちていたのかもしれない。)

「私の名前は氷雨。セフィロス君だよね?」


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