ひとり | ナノ



2


そんな手紙を受け取ったのは、彼女が実験体として、連れて行かれてから、2年程経った時だった。
宛名はセフィロスへ、とだけで。
それを渡してきたのは、神羅内の掃除婦。
掃除婦は科学室のゴミ箱で、これを見つけた、と言っていた。
きっと、彼女が書いたものが、宝条か誰かに捨てられてしまったのだろう。
氷雨が、俺を忘れていない、というだけで、嬉しかった。
気持ちが温かくなる、なんて、どこかの小説に書かれていた陳腐な文章の1つだと思っていた。
少し眉を下げてから、その手紙を大切に仕舞う。
まだ、自分が彼女の中にいるのだとわかって、嬉しくてたまらない。
だが、同時に、会えないのだとわかって酷く落ち込んでもいる。

彼女が連れて行かれた日、俺は外に出ることを許可された。
昔は、いつも出たかった。
でも彼女と、氷雨と一緒にいるときは、そんなこと思わなかった。
一緒にいられるなら、外になんて出られなくても良い。

「セフィロスさま、」

今の世話係は俺に媚びるように話しかけてくるし、料理もできない。
俺のことを1つも知らないくせに、俺が何でもできるかのように告げる。
特に、この間の任務の後からは特にだ。
銀色の髪は、神に選ばれた印、だと言われた時は思わず、武器に手が伸びかけた。
その色を嫌悪し、攻撃してきたのは、お前らだろう…!
そんなことを言ったところで、ヤツらは何もしてくれないし、また媚びた笑みを浮かべるだけだろう。

ああ、氷雨に会いたい。

俺を全能かのごとく言ってくる世話係を放置して、外に出る。
任務以外では未だにミッドガルから出ることはできないが、それでも、四角い空でなくなっただけマシなのだろう。
はあ、とため息を吐いて、空を見上げる。
さらさらと髪を揺らし、風が吹き抜けた。

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