ひとり | ナノ



12


俺が強くなると決めてから、俺は実験に積極的に取り組むようになった。
やられていることは勿論変わっていない。
ただ、モンスターと戦うだけだ。
だがその中で、俺が意識を変えた。
それだけで、自分の能力をあげることが出来ている、と感じる。
いかに怪我を追わないか、というのは少し前からやっているのだが、それ以外を、だ。
例えば、一撃で敵の急所を突く、三手先の攻撃を考える、敵の動き・能力を覚える。
という、簡単なことだが、今までは気にしていなかっただけに、中々難しい。
でも、これが出来なくては、彼女を守ることなどできないだろう。
刀を握る手に力が入る。
一度目を伏せて、息を吐いた。
最後の一匹を倒し、実験室から出る。
シャワーを浴びながら、ふと、考えた。
彼女を、笑わせたり、喜ばせるには、どうすればいいだろうか。
適当に用意されている服を来て、部屋に帰ろうと足を踏み出す。
セフィロスくん、かえろう?
氷雨が笑う。
俺も、笑う。
手を重ねて、隣同士に並んで歩く。
優しいその空気が心地よくて、嬉しくて、
セフィロスくん、
思いついたような声に、俺は首を傾げ聞き返す。
セフィロスくんは、たんじょうび、しってる?
少し淋しそうなその声に首を左右に振る。
その反応に悲しそうな顔をする彼女だったが、俺にはそれがわからなかった。
誕生日という概念は知っているが、わからない。
首を傾げていると、にっこり、楽しそうに笑った氷雨が俺の手を引いた。
きょうを、わたしとセフィロスくんのたんじょうびにしよっか
部屋に帰った彼女はニコニコと笑いながら、楽しそうに俺の好きな料理を作った。
思わず瞬いて、おいしそうな食事に目を細める。
氷雨が、俺と目を合わせて、幸せそうに口にした。

セフィロスくん、うまれてきてくれてありがとう


記念日を作った。
(その笑顔が優しくて、暖かくて、)
(目を逸らしてから、小さく返した)

「俺と、出会ってくれてありがとう」

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